3月10日、全米16位のシリコンバレー銀行(以下SVB)が破綻、市場にはショックが走った。SVBは、その名の通り、ハイテクのメッカであるカリフォルニア州シリコンバレーにある中堅銀行で、預金の受け入れについても、貸し出しについても、ハイテクやヘルスケア関連のスタートアップ企業が非常に多いというやや特殊な銀行である。
米銀の破綻としては史上2番目の規模とされているが、その資産総額は2090億ドル(およそ28兆円)、最大手のJPモルガンと比べると17~18分の1、業態は違うが2008年に破綻したリーマン・ブラザーズの3割程度である。
リーマンのように金融市場で大きな存在感を示す存在だったわけでもなく、そうした意味ではSVBの破綻そのもののインパクトはそれほど大きいわけではない。だが、これは氷山の一角と捉えるべきものであり、水面下で何が起きているのかが重要な点である。
SVBはなぜ破綻したのか
まず、簡単にSVB破綻の構図を見ておこう。SVBはコロナ後の金融緩和の中、2020年から2022年初までのわずか2年で、預金残高を3倍超と急激に伸ばした。そして、その急増する預金の大半を国債や住宅ローン担保証券(RMBS)などの債券投資に充てていたのだ。
これらの債券は、債務不履行(デフォルト)に陥るリスクが極めて低い安全資産とされるが、金利の上昇によって価格が下がるリスクはある。とくに満期までの期間が長い債券はそのリスクが大きい(ちなみにRMBSは通常、満期までの期間が長く、さらに金利上昇時には普通の債券よりも価格が下がりやすくなるという性質をもっている)。
2022年以降、FRB(連邦準備制度理事会)による急激な利上げが始まると、これらの債券の価格は大きく下がり、SVBは大きな含み損を抱えるようになった。債券の含み損というのは、今売却するといくら損するかを示すものである。売らなければ損は表面化しないが、表面化しない場合でも、債券の収益性が今の金利に比べて低くなっていることを表すものとなる。
一方で、急激な金利上昇は、2つのルートで預金の流出を招く。1つ目は、国債などの利回りが上昇するにしたがって、低利の預金に魅力がなくなり、債券に資金がシフトすることによるものだ。2つ目は、SVB特有の要因であるが、金利上昇でベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)ファンドの資金力が落ち、スタートアップ企業の資金繰りが厳しくなって、預金引き出しが増えることによるものである。
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