シリコンバレー銀が陥った「証券運用」の落とし穴 経営破綻のSVBが日本の銀行に遺した教訓

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小

急激なペースでの金利上昇が、銀行経営に思わぬ打撃となった。海の向こうで起きた破綻劇に、日本の銀行も「他人事」ではいられない。

SVB(シリコンバレーバンク)の破綻を反面教師として、日本の銀行が気を付けるべきポイントは何か(写真:Bloomberg)

「社名に『銀行』こそ付いているが、銀行のようなリスク管理体制が敷かれていたようには見えない」

急激な預金流出により、3月10日に経営破綻したアメリカのシリコンバレーバンク(以下、SVB)。ある大手銀行の幹部はSVBの資産構成を見て、冒頭のように評する。

海の向こうで突如起こった破綻劇は、日本の銀行にとっても反面教師となりそうだ。引き金となったのは、銀行らしからぬいびつなポートフォリオだった。

SVBの運用先は「超長期債」に偏重

社名の通りシリコンバレーのスタートアップ企業を主要顧客に抱えるSVBだが、近年のスタートアップ企業はベンチャーキャピタルなどからのエクイティ調達が好調で、銀行借り入れの需要は低かった。そのため、預金の過半は貸し出しではなく、債券運用に回された。

SVBの蹉跌を一言でいえば、「過度な短期調達、長期運用」だ。

同社が毎年発行している「Form 10-k」(日本の有価証券報告書に相当)によれば、2022年末時点の連結総資産は2117億ドル。このうち約1700億ドルを占める預金のほとんどは、いつでも引き出しが可能な流動性預金だ。ひとたび取り付け騒ぎが起きれば、あっという間に流出するリスクと隣り合わせだった。

次ページ常識が覆された
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内