シリコンバレー銀が陥った「証券運用」の落とし穴 経営破綻のSVBが日本の銀行に遺した教訓

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急激なペースでの金利上昇が、銀行経営に思わぬ打撃となった。海の向こうで起きた破綻劇に、日本の銀行も「他人事」ではいられない。

SVB(シリコンバレーバンク)の破綻を反面教師として、日本の銀行が気を付けるべきポイントは何か(写真:Bloomberg)

「社名に『銀行』こそ付いているが、銀行のようなリスク管理体制が敷かれていたようには見えない」

急激な預金流出により、3月10日に経営破綻したアメリカのシリコンバレーバンク(以下、SVB)。ある大手銀行の幹部はSVBの資産構成を見て、冒頭のように評する。

海の向こうで突如起こった破綻劇は、日本の銀行にとっても反面教師となりそうだ。引き金となったのは、銀行らしからぬいびつなポートフォリオだった。

SVBの運用先は「超長期債」に偏重

社名の通りシリコンバレーのスタートアップ企業を主要顧客に抱えるSVBだが、近年のスタートアップ企業はベンチャーキャピタルなどからのエクイティ調達が好調で、銀行借り入れの需要は低かった。そのため、預金の過半は貸し出しではなく、債券運用に回された。

SVBの蹉跌を一言でいえば、「過度な短期調達、長期運用」だ。

同社が毎年発行している「Form 10-k」(日本の有価証券報告書に相当)によれば、2022年末時点の連結総資産は2117億ドル。このうち約1700億ドルを占める預金のほとんどは、いつでも引き出しが可能な流動性預金だ。ひとたび取り付け騒ぎが起きれば、あっという間に流出するリスクと隣り合わせだった。

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