債券投資の原資である預金残高が減少すれば、債券を満期まで保有し続けることができず、損失覚悟での売却を余儀なくされる。預金残高の減少を抑えようと預金金利を大幅に引き上げれば、今度は低利の債券利回りよりも資金調達コストが上回って逆ザヤとなってしまう。
結局SVBは、
①預金の減少を食い止めることができずに債券売却を迫られ
↓
②巨額損失の発生と資金繰り難によって信用不安が高まり
↓
③頼みの綱の緊急増資計画も失敗に終わった
といういう一連の流れにより、破綻を余儀なくされたのである。
システミックリスクに発展する可能性は低い
先述の通り、SVBの破綻そのものは、その規模や金融市場でのプレゼンスからして、ただちに金融システム全体を揺るがすシステミックリスクにつながるようなものではない。ただし、この手のショックは、ある程度、他に波及することが避けられない。
たとえば、早速3月12日に、シグネチャーバンクという暗号資産関連の取引が多い銀行が破綻している。シグネチャーバンクは規模でいうとSVBの半分程度なので、やはり単独のインパクトはそれほど大きくないが、預金者の不安心理が広がれば、次に何が起きるかわからなくなる。
その点では、SVBについても、シグネチャーについても、アメリカ当局は預金を全額保護する方針を固めており、いわゆる“取り付け騒ぎ”の広がりはある程度抑えられるだろう。
いずれにしても、最も肝心な点は、こうしたショックが大手行にまで波及するかどうかである。今のところ、大手を巻き込む形で危機が拡大すると見る向きは少なく、その通りであれば、株式市場の動揺も早晩落ち着くはずである。
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