3月12日の午後、プラシャント・フォンセカはサウスバイサウスウエストの会議に出席した後、ほかのテック業界関係者とともにテキサス州オースティンからサンフランシスコに帰る飛行機に乗っていた。
フライトの途中、10日(金曜日)に経営破綻したシリコンバレー銀行の預金が全額保護されることを政府が確約するというニュースが伝わると、機内は乗客の大歓声に包まれた。
「飛行機の中で人々があれほど興奮する姿は見たことがない」。チューズデー・キャピタルでベンチャーキャピタリストをしているフォンセカは、そう言った。
預金が全額保護されるというのは確かに朗報だった。だが、テック系スタートアップ企業のエコシステムで要の役割を担ってきたシリコンバレー銀行の破綻は、テクノロジー業界がその本性を露呈する契機ともなった。
シリコンバレー銀行に預けていた資金が凍結されたスタートアップや投資家は、預金が全額保護されるという政府の発表に胸をなで下ろしているが、今回の件でテック業界は、そのもろさと責任回避体質を天下にさらすことになった。
世の中から白眼視される身勝手ぶり
中でも、シリコンバレー銀行の破綻をめぐる狼狽ぶりは、スタートアップ業界がいかに1つの金融機関に依存しきっていたかを浮き彫りにした。同銀行が破綻するとテック業界関係者は悲嘆に暮れて政府に救済を懇願。そして、規制当局が救済に同意すると、今度は安堵して有頂天になるテック業界関係者の姿があった。
ツイッター上では、テック系の投資家が責任のほぼすべてを他人になすりつける様子が見られた。ところが、テック業界の苦境に対する同情の声は業界の外からはほとんど上がらず、そうした冷たい反応にこれらの投資家が逆に衝撃を受けるありさまだった。