「そのため、公衆の面前でパニックに陥っている人間たちに、この業界の金融的な柱の管理を安心して任せられる『大人』は果たしているのだろうかと、人々が疑問に思わざるを得ない状況になっている」(ゴールドマン)
ソーシャルメディアでテック業界への批判がふつふつと沸き上がる中、その流れを変えようとした人もいる。シリコンバレー銀行が破綻した週末、スタートアップ支援を行うYコンビネーターの社長ギャリー・タンは、何百人という創業者や起業家にメッセージを送り、同銀行の破綻がテック業界にもたらしている影響について同情を誘う「ツイートの大量投稿」を始めるよう呼びかけた。
「イノベーションを救え」の署名運動を展開
その目的は、預金が全額保護されなければイノベーションが停滞する可能性を伝えることにあった。さらに、テック業界に同情をもたらす見方が広まれば、ずけずけと物を言う「テック業界の大物」的なベンチャーキャピタリストや起業家たちがこうした状況下でシリコンバレーの顔になってしまう事態を避けられるという期待もあった。
ニューヨーク・タイムズが入手したタンのメッセージには、「コミュニティーとして団結して私たちの強さを見せれば、スタートアップの未来によい影響を残せる」と綴られていた。
タンはその後、「アメリカ経済におけるイノベーションを救う」ことを政府に求めるオンライン署名活動を開始し、5000人を超える最高経営者が署名した。署名した経営者が抱える従業員の数は、合計で50万人近くに上る。
その週末には、600を超えるベンチャーキャピタルもゼネラル・カタリストの取りまとめで団結。シリコンバレー銀行への支持を表明し、破綻は遺憾だとする声明に署名した。
シリコンバレー銀行が多くのテック系スタートアップに選ばれてきたのは、ほとんどの銀行がためらうハイリスクな新興企業への貸し付けに特化していたからだ。シリコンバレー銀行が自らうたっていたところによると、ベンチャーキャピタルが出資するアメリカのテクノロジー・生命科学系の企業の半数近くにサービスを提供し、2500を超えるベンチャーキャピタルからも利用されていた。