FRB、銀行破綻でも一段の「利上げ」は欠かせない 「年内にかけて利下げ」という見立ては楽観的

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――仮にすべての預金が保護の対象となった場合、2008年のリーマンショック時に起きた「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動のような、金融業界に対する社会的な批判が高まることはないでしょうか。

規制当局としては何を保護の対象にすべきかについては、慎重にならなければならない。規制当局がすべての損失をカバーするとなったら、モラルハザードが起きてしまう。過去の金融危機と違う点は、FDICが機能しているということだ。銀行が保険料を払う代わりにFDICが預金者に対して一定の金額を支払うという仕組みは公平性が保たれている。

一方で破綻した銀行の株主や無担保の債券保有者を救済の対象にはできない。そこのバランスを取っていかないといけないと、銀行システムの健全性や信頼は保てない。

テクノロジー企業の行方は

――SVBと深いつながりのあったアメリカのテクノロジーセクターは、この先どうなっていくのでしょうか。

SVBがテクノロジー企業に対して集中的に貸し出しを行っていたのは事実だが、SVBの役割を代替しようとする銀行が現われてくるとみている。プライベート・エクイティ・ファンドなど、テクノロジー企業にとって新たな資本調達の出し手も生まれると考えている。

――GAFAMなどのビックテックは、レイオフ(一時解雇)を積極的に行っている最中です。テックセクターがさらに冷え込めば、タイトな労働需給は改善に向かい、利上げペースも落ち着くということもあるのでしょうか。

それはないだろう。アメリカ経済全般で見ると、非常に強い労働需要がある。ほぼ唯一レイオフの傾向がみられるのがテックセクターであり、失業保険申請や求人倍率が非常に高い数字となっていることもそれを物語っている。

テックセクターで解雇された人は、また違う業種で採用されている。それだけ労働市場は極端に逼迫した状況が続いており、失業率の低下圧力も持続している。これが金融システム不安とは別に、FRBが頭を悩ましている問題だ。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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