こうした度重なる環境の変化に、彼女は心身ともに限界を迎えていました。そんな彼女に一縷の望みを与えたのが、「大学受験」という選択肢でした。
「家にいても母や妹からの言葉の暴力は続き、自律神経に異常が出ました。進学して家を出たら、何か状況が変わるかもしれないと思ったんです」
彼女は学校に21時まで残って参考書に向かい、家に帰っても深夜まで猛勉強を続けた結果、入学時に400人中74位だった順位を半年後には2位まで上げました。一般受験でMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)を狙える成績になってきたのですが、ここでも母親に進路選択を妨害されます。
「『お金がないから県外の私立大学に行かせない』と言われたんです。それで緊張の糸が切れてうつ病になり、定期的に通院していた精神病棟に長期間入院することになったのです」
「自分の人生は何もいいことがない」と思って人生に絶望した彼女。しかし、入院中に新しい世界を知りました。人生で初めて母親と離れて暮らしたことで、自分を傷つけてくる人が誰もいない環境があることに気づいたのです。
「だからこそ、家から離れれば自分の力で生きていけると確信しました」
家から離れるため、受験料・入学金・授業料がすべて免除される文系の国公立大学を探し、条件に合致した愛知県立大学を志望することに決めます。
高校2年生の3月に精神病棟で受験勉強を始めた彼女は、4月に退院し、夏まで美容室でアルバイトをして月3万円をコツコツ稼ぎながら、県や財団などの奨学金制度を調べて給付型で25万円、貸与型で38万円をもらい、参考書代や交通費などの費用に充てました。
センター試験の重圧に耐えきれず
着実に学力を伸ばした彼女は、センター試験前の模試で愛知県立大学のC判定を出します。しかし、センター試験では重圧に耐えられず、合格ラインの70%に大きく及ばない59%に終わり、二次試験で落ちて現役の受験を終えました。
「自分は受験に向いていないと思いました」と語る彼女は、この失敗を受けて、ひとまず母親と妹から離れるため、奨学金をもらえて入学金も免除される名古屋の美容専門学校に進みます。
しかし、進んだ学校では体育会系の空気が彼女の肌に合わなかったため、6月に辞めて浪人を決断しました。
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