政府に情報を上げなかった東電の初動に疑問--フランス高級紙ル・モンドは大震災をどう伝えたか、駐在記者に聞く
電力の約8割を原子力発電で賄う「原発大国」のフランス。同国のジャーナリストは東日本大震災や東京電力の福島第一原子力発電所の事故に遭遇し、いったい何を伝えたのか。長年にわたり日本で取材を続ける仏高級紙『ル・モンド』のフィリップ・メスメール記者に聞いた。
--東日本大震災について、どのような記事を書いたのですか。
災害の警報システム、東電の原発、NHKの災害報道に関するものなど、さまざまな記事を執筆しました。広島へ足を運び、被爆者にも会いました。震災や原発事故の報に接し、いったい何を感じたのか。あるいは原発に対して抱く不安などについても話し合いました。
神戸へ出向いて1人の男性にも会いました。彼は1995年の阪神・淡路大震災で被災し、それをきっかけに災害の被災者などを助けるためのNGO(非政府組織)を立ち上げ、今回の震災では宮城へ行っています。
原発の賠償問題、さらには原発事故を受けて、「関東から離れるべきか、とどまるべきか」迷う日本人をテーマにした記事も書きました。
--東京電力の原発の問題については、具体的に何を伝えたのでしょうか。
東電の隠蔽体質を指摘しました。同社はこれまでも情報隠蔽を繰り返してきた。新潟の柏崎刈羽原発のデータ改ざんなどにも触れました。東京電力は世界レベルでも優良企業だとされてきましたが、その一方で、特に原子力に関する情報を隠す傾向があるのも事実です。
--同社が現在、発信している原発関連の情報も疑っていると。
信用はしていません。なぜならば、過去に情報を隠蔽していたからです。
それに、社長も最近、公の場に姿を現しませんよね。コミュニケーションをしようとしない。彼はいったい何をしているのでしょうか。東電の対応には首を傾げざるをえない点が多々あります。何も問題が起きていないときには「良い会社」なのですが、原子力についてはいつも問題を隠そうとする。それが個人的な印象です。