政府に情報を上げなかった東電の初動に疑問--フランス高級紙ル・モンドは大震災をどう伝えたか、駐在記者に聞く
非常時には24時間放送を実施。それも、センセーショナルではなく、ニュートラルなトーンで伝えました。それに比べると、民放はややセンセーショナルに取り上げている面があった。NHKはシンプル。悪くないですね。
気象庁の情報をそのまま視聴者に伝え、官庁の情報もダイレクトに発信する。このため、視聴者は必要な情報を素早く得ることができる。ライフライン関連の情報を得るためには多くの人たちがNHKを見ていますね。有用かつ、重要な役割を果たしています。
--海外では被災された方々の冷静かつ秩序ある行動に対する称賛の声が多いですね。
米国ではニューオーリンズなど、大型ハリケーンのカトリーナに見舞われた地域で盗みや略奪が横行した。日本ではそのような行動をほとんど見ない。私は長く日本に住んでいるので驚きませんが、西洋の人々にとっては驚くべきことなのです。
ですから、私はその質問をしばしば受けます。それに対する答えとしては、「学校における教育の充実」を挙げています。グループ学習などを通じて社会倫理などが培われていく。独りひとりが「公」のモノに対する尊敬の念といったものも抱いています。ちょっと説明するのは難しいのですが、そのように感じています。
--今回の震災で、外国人の間にあった日本の「安全神話」が崩壊してしまったのではないでしょうか。
強い余震が繰り返し起きていますが、多くの建物はしっかりしている。建造物が崩壊したのは主として津波による影響が大きかった。だから、建造物に対する信頼が揺らぐことはありません。被害は甚大で、想像できる範囲を超えていた。安全な国であるというイメージが変わってしまったとは思いません。
もっとも、原発の問題は別です。安全基準に対して疑念があるのは事実です。
--日本は立ち直ることができると思いますか。
はい。むろん、時間は少々かかるでしょう。でも、必ず立ち直ることができるはずです。日本には再建のために必要な頭脳、才能、想像力がある。だから、まったく心配していません。
率直に言えば、唯一の心配は原発の問題です。