【悪夢】頻繁に見る人に潜む病と「脳のカラクリ」 怖い夢には「抗ストレス作用」があるという説も

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悪夢は過去の経験を反映している。上司や学校の先生に怒られたなど、ショックな出来事があれば、その日に怒られる夢を見る場合もあるし、受験に落ちたなど、若いころに経験したことが悪夢として現れる場合もある。

「日本は受験に対するプレッシャーが強く、 受験に間に合わなかったとか、不合格だったなど、大人になってからも試験に関係する悪夢が多いですね」(西多さん)

ちなみに、4~5歳まではまだ人生経験が少ないため、夢の中身はシンプルで、悪夢もあまり見ることはない。悪夢を含めさまざまな夢を見るようになるのは、思春期で多感な年ごろになってからだそうだ。

また、睡眠時間が長いロングスリーパー気味の人や、昼間に寝て夜に活動する夜型の人のほうが、悪夢の発生率が高くなっている可能性もあるという。

「精神的に不調になると、睡眠時間が長くなる人もいます。この傾向は、一部の抑うつ状態の人にも見られます。睡眠時間が長くなると、睡眠の後半に出現しやすいレム睡眠の時間も長くなりがちです。昼まで寝ていると、レム睡眠が出現しやすくなります。起きがけに見る悪夢のため、その内容を覚えていることが多いです 」(西多さん)

悪夢=悪、とは限らない

悪夢は良くないものというイメージがあるが、一説には悪夢にはストレスを軽減させる抗ストレス作用があると言われる。したがって必ずしも“悪夢=悪”ではない。

だが、毎朝悪夢にうなされて起きるのは、大変つらい。悪夢を見ないようにすることはできるのだろうか。

たとえば適度な運動や、人との交流といった日中のストレス対策は、睡眠の質を改善し、悪夢の減少につながることがある。

西多さんによると、「悪夢を見ることが多いから」という理由で受診をする人はほぼいないという。ただし、悪夢を見ることで日中の仕事のパフォーマンスに影響が出たり、悪夢を見た本人が精神的なストレスを抱えていたりする場合は要注意だ。

「悪夢によって睡眠がとれなくなる、質が悪くなり、日中の生活に支障が生じているようであれば、脳の病気の可能性もあります。医療機関を受診してもいいでしょう」と西多さんは話す。

実は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の人は、悪夢を頻繁に見る傾向にある。

PTSDとはなにかしらのトラウマ体験があり、時間が経ってもフラッシュバックする精神疾患だ。震災で被災した経験や、交通事故を目撃してショックを受けたことで症状が出現する。またパワハラやいじめによって生じる複雑性PTSDもある。

患者の中には、トラウマ体験から外に出るのが怖くなって外出を避けるようになったり、否定的な感情が強くなって人付き合いができなくなったり、といった症状が見られる。さらには、うつ病を併発する患者もいる。

西多さんは外来を受診する患者の中で、繰り返し見る悪夢に加えて日中のフラッシュバックなどを伴っている場合は、PTSDを疑うという。

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