日本企業は、なぜ中国で「踊り場」にあるのか 実は、今こそが再成長のチャンスだ

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うまくマネジメントするコツは、中国人も日本人も同じなのだ。基本は、「リーダーシップ」と「部下へのケア」を兼ね備えた人材がうまくいく。つまりは、日本で良き上司でないのにいきなり海外で良き上司になるケースはない。

“実力はあるが組織になじめない変わり者”を、環境を変えればフィットするだろうと新興国に派遣するケースがあるが、現地法人で受け入れられないことが多い。特に急速に拡大した企業の現地駐在員は、その企業内部でしか通用しない論理をそのままに海外現地法人でも適用し、マネジメントするケースもあるが、うまくいかないケースがほとんどだ。ビジネス拡大一辺倒ではなく、日本でしっかり一流の常識人、教養人を育てておきたいものだ。

「一人前」という言葉がない文化

現地法人のスタッフとのコミュニケーションには基本的な留意点が2つある。1つは、とかく日本人出向者は注目の的であり、一挙手一投足がすべて筒抜けになっているということ。中国では「WeChat」というLINEに似たSMSツールが普及しており、この“地下水脈”を通じて社員間ですぐうわさが広まる。

いくら仕事で成果を挙げても、「既婚なのに社内の女性とデートをしていた」といううわさが流れてしまうと足をすくわれかねない。中国に赴任中はプライベートも含め身を律することが重要だ。

もうひとつは、中国人は一緒に食事をとることを非常に大切にしていること。実際、中国には「一人前」という言葉が存在しない。大勢で食卓を囲むというのが自然なのだ。だからこそ、社員の家族も呼んで食事をごちそうするというのは、「あなたを大切にしている」というメッセージを送ることと同義となる。食事を通じて信頼関係を構築するというのは、ROIとしても非常に有効な取組みだといえるだろう。(第2話へ続く)

(使用イラスト:apichart / Imasia)

アクセンチュア 中国ビジネス研究会
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