日本企業は、なぜ中国で「踊り場」にあるのか 実は、今こそが再成長のチャンスだ

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事実、中国の市場規模や成長性に対する期待感から、今後も70%近くの企業が中国でのビジネス規模の維持・拡大を志向している。中国はいまや世界随一の巨大マーケットであり、ここで安定的に利益を生む基盤をつくらなければ、グローバル企業として世界の舞台で生き残っていくことは難しくなる。ある意味で、営業・マーケティングと生産に投資するフェーズから、新興国への投資原資とするための利益を安定的に生み出すための経営基盤構築のフェーズに入ってきている。

カギは「人材」と「コスト」のマネジメント

ただ、残念ながら、日本の本社の中国マーケットに対する認識不足や頻繁に入れ替わる駐在員、現地スタッフの質のばらつきなどにより、改革は遅々として進んでおらず、欧米企業、中華系企業との競争に苦戦を強いられているのが実態だ。

そうした日本企業の悩みは、近年、突き詰めれば“「人材」と「コスト」のマネジメント”に集約されている。いずれも、中国市場で安定成長していく上で欠かせない要素となる。加えて、政権交代以降、“外資狙い撃ち”で収賄、独禁法違反等の摘発が強化される中、BCP(事業継続)の視点からもリスクに備えることが急務となっている。

まさに今、中国事業をキャッシュ・カウ(稼ぎ頭のビジネス)にするために、バリューチェーンの再点検ならびに抜本的な業務・仕組みの再構築が求められているということだ。中国に派遣された沢木がまず何に取り組んだのか、彼の行動を追ってみよう。

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1週間後、上海浦東空港に単身降り立った沢木の目に飛び込んできたものは、入管手続きを待つ二重三重の人の波だった。ところどころで怒号も聞こえる。人口の多さに驚くとともに、複数の係員がいながらも一向に整理をしようとしない。また検疫ゲートの狭さも、人の波を溢れ返させる一因となっていた。

「少し改善するだけで、いくらでも行列はスムーズに流れるはずだ。また、いくら雇用対策のためとはいっても、無用と思える係員の数も多い。ぱっと目につく空港でこの状態なのだから、一事が万事、企業活動においても“脂肪”が相当溜まっているのではないか?」

タクシーの窓から、ビル群が立ち並ぶ浦東の街に目をやりながら、沢木は改善アプローチについて思いをめぐらせていた。次の日、朝礼で一堂にあいさつする沢木の姿があった。

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