日本企業は、なぜ中国で「踊り場」にあるのか 実は、今こそが再成長のチャンスだ

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「端的に言おう。来週から中国に行って、“ダンス”を止めて来い――」

「ダンス、ですか」

「そうだ、君も知ってのとおり、中国事業は長いところ踊り場だ。わが社にとっての最重点市場でこの状態では株価にも響く。いつまでも踊っているわけにはいかん」

「つまり再成長軌道に乗せろ、と」

「ああ。それに……売り上げが止まったこの3年間、販促費の濫用や不正経理などこれまで表面化していなかった課題が一気に噴出しているようだ。“売上はすべてを癒す”とはよく言ったものだ。この機会に、成長基盤も、しっかり整備してきてほしい」

「なるほど、重責ですね」

「君には経営企画担当の副総経理の椅子を用意した。いつもどおり、好き勝手やってこい。ただし、結果を出すまでの猶予は1年だ」

それだけ言い残すと、もう話は終わったとばかりに電話をかけ始めた。

いつもの強引な物言いに沢木は少しあっけにとられながら、一礼して社長室を出た。妻の仕事や子どもの学校のことを思うと少々気が重かったが、自分の席についてパソコン画面上の書きかけの分析レポートを眺めているうちに腹は固まった。ここ3年、海外担当としてレポートを書き続けながら、自分でなんとかしてみたいという気持ちをずっと持ち続けてきた。コンサルタント時代、構想から実行までの徹底支援を旨としていた男の血が騒ぐ。

「やってやろうじゃないか……」

10数年来の成長曲線が止まり、3年連続で売り上げ、シェアとも横ばいの「踊り場状態」に陥った中国事業を変革すべく、副総経理としての沢木の戦いが始まった。(続く)

「踊り場」に差し掛かる日系企業

アリババのIPO(新規株式公開)、ニューヨークの高級ホテルの買収等、中国系企業の華やかな話題が世間を騒がせている一方で、これまで生産と営業に投資し中国での成長を実現してきた多くの日系企業が「踊り場」に差し掛かかっている。

すでに中国現地での生産から撤退するケースもあるが、過熱する競争、高止まりを続ける人件費、人材の低い定着率、政権交代以降のコンプライアススリスクの顕在化などを背景に、今後さらに中国市場からの撤退する企業も現れてくるだろう。

中国に進出済みの事業会社は今こそ、「チャイナ・プラスワン」を精力的に推し進め、「夢よもう一度」とばかりにほかの新興国に軸足をシフトすべきなのだろうか。いや、多くの企業が中国市場への投資を絞り始めたいまこそ、「踊り場」を脱し事業を再成長軌道に乗せる絶好の機会ともとらえることができる。

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