日本文学界が誇るダメ男「太宰治」
「刺す」
こんな文面を手紙に書いた文豪が、日本に存在していた。――物騒だ。物騒すぎる。誰だよこんな手紙書いたの。本文を読んでみると、なんとこの文面を送られた相手は川端康成。ノーベル文学賞を受賞した、大文豪である。さて、それでは川端康成に「刺す」と書いたのは誰だったのだろう。
答えは「太宰治」。そう、『走れメロス』『富嶽百景』『人間失格』などの名著を書き上げた、あの日本の文豪である。
太宰治といえば、日本文学史が誇るダメ男、いや、クズ男として有名だ。人生で8回も自殺(未遂含む)を繰り返し、しかしそれでも心中するような女性は途切れず、さらに文壇で仲のいい男性の友人たちも多かった太宰治。今だったらTwitterで炎上しているどころの騒ぎではない。というか昭和初期ですら許されていたのか、怪しいものがある。
だが一方で、彼の具体的な交友関係については案外知られていない面も多い。女性と関係を持ちながら、同業者の男性を実は深く愛し、そして愛されていた太宰治。今回のシリーズでは、彼の作品と彼の人となりを追いながら、いったいなぜ彼の作品はここまで人気になったのか? そこを考えてみたい。
まず今回は、太宰治が「刺す」とまで思った、川端康成の愛憎あふれる関係について見てみよう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら