太宰治、川端康成を「刺す」と怒った"愛憎劇"の真相 日本文学界屈指のダメ男が物騒な手紙を送った背景

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ちなみにこの後、太宰の作品は、第2回芥川賞にはノミネートすらされなかった。そして第3回芥川賞選考前のタイミングで、太宰は自らデビュー単行本『晩年』を川端康成へ郵送した。

「何卒私に与へて下さい。一点の駈け引きございませぬ。深き敬意と秘めに秘めたる血族感とが、右の懇願の言葉を発っせしむる様でございます。(中略)早く、早く、私を見殺しにしないで下さい。きっとよい仕事できます」

という手紙まで、自らつけて。

川端康成は太宰治の作家人生の原点

芥川賞を私にください! そんな手紙をつけて川端に自分のデビュー作を送る太宰は、『晩年』を遺書のつもりで書いたという。が、結局『晩年』は芥川賞を受賞せず、太宰は生涯、芥川賞に選ばれることはなかった。

その出来事から13年間。太宰治という作家の、怒涛の執筆人生が幕を開ける。『走れメロス』も『人間失格』も、このときにはまだ影も形もなかった。だとすれば、彼の作家人生は、川端康成に「俺のこと、わかってるんでしょ!? 芥川賞ちょうだい!」と叫んだところから生まれていたのだ。

太宰治という作家の特異な人生は、川端康成に酷評されたところから、始まったのである。

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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