織田信成さん「モラハラ訴訟」敗訴に学ぶ3つの論点 自分が見ている景色と相手が見ている景色は違う
パワハラ裁判の難しいところは、「どのような言動・事実関係があったか」を証拠によって証明する必要があるだけでなく、そのうえで「(証拠によって証明できた)言動・事実関係がパワハラ(不法行為)に当たるか」という法的評価を乗り越えなければならない点にあります。
また、パワハラの事実があったと認められたとしても、裁判所が認める慰謝料額は、100万円前後、高くても200万円未満のケースがほとんどです。被害者の立場からすると低すぎると感じるかもしれませんが、相場としては知っておくとよいでしょう(なお、仕事を休まざるをえなくなった場合の休業損害など経済的損害については慰謝料とは別に請求することができます)。
織田さんも代理人に弁護士がついていますから相場感は認識していたと思いますが、社会に対する問題提起の意味を込めて1000万円の「慰謝料」を求めたのでしょう(請求額のうち残りの100万円は弁護士費用と思われます。損害額の1割を弁護士費用として認めるのが相場です)。
パワハラ被害を受けたときの2つのポイント
では、自分がパワハラ被害に遭っていると感じたらどのように行動すべきでしょうか。大きく分けて2つのポイントがあります。
まず1つ目は、証拠を残しておくことです。裁判で損害賠償を請求する場合には、前記のとおり、パワハラに当たる言動があったことを証拠によって証明しなければならないからです。また、裁判に備えて証拠を残しておくことで、裁判に至る前の交渉の場面においても、裁判の見通しを踏まえた話し合いができるようになります。
パワハラの証拠としては、面談時や電話の録音、怒鳴っている場面の録画、メールやLINEの記録などが客観性のある証拠として使えます。また、客観性はやや下がるものの、日時や場所、状況を含めてどのような言動を受けたかを自分で具体的に記録した日記やメモも証拠として役立ちます。
また、他人の面前で行われたパワハラであれば、同僚などの証言も有効です。ただし、それまで相談を聞いてくれていた同僚であっても、いざ証人として被害者側につけば会社と対立することになりますから、証人となることを躊躇するケースも多いので注意が必要です。場合によっては匿名で協力してもらうなど、できる範囲で証拠を集めましょう。
2つ目は、1人で戦う前に専門家に相談することです。理不尽なハラスメントを受けたと感じたとき、つらい気持ち、苦しみを誰かに知ってほしい、世に問いたい、と思うことも当然あるでしょう。しかし、安易に情報発信することがかえって自分に不利になることもあります。その前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら