織田信成さん「モラハラ訴訟」敗訴に学ぶ3つの論点 自分が見ている景色と相手が見ている景色は違う

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今回の判決のように、記者会見を開いて公然とパワハラがあった旨の事実を摘示することは名誉毀損と言われかねません。また、記者会見でなくても、個人がブログやSNSなどで不特定多数に対して情報発信をする場合にも同様のリスクがあります。

また、摘示した事実がたとえ真実であったとしても名誉毀損に該当することがあるので注意が必要です。

記者会見などを開いて問題を世に問うことは確かに意義深いものです。ただし、世に問うということは、本人も社会からの視線を浴びることになります。その精神的負担は極めて大きいです。自分があえてそこまでやる必要があるのか、あるいは耐えられるかということを一度冷静に考えてみることも大切です。

裁判という解決方法は結論まで時間がかかる

さらに今回の裁判は、勝ち負けはともかく、2019年11月の提訴から2023年3月の判決までに3年半の歳月がかかっています。この間、新型コロナウイルスの影響で裁判所の期日が延期になった影響はあろうかと思いますが、裁判という解決方法は結論まで時間がかかることの好例だと思います。今後、もし控訴や上告があれば解決はさらに先になります。

裁判はトラブル解決の一手段にすぎません。時間もお金もかかりますし、精神的な負担も伴います。しかも、裁判官という一番事情を知らない第三者に判断を委ねる点に特徴があります。裁判を使わなくても、当事者間で話し合うことで、わだかまりや誤解が解けることもありますし、監督官庁や業界団体の相談窓口に申し入れることで解決できる場合もあります。

今回問題となったモラハラ、パワハラだけでなく、セクハラ、マタハラなどさまざまなハラスメントが問題となっています。いずれの問題にも共通していえることは、人はそれぞれ自分の視点で世界を見ているということです。

ですから同じ世界を見ているようでいても、自分が見ている景色と相手が見ている景色は異なります。誰かとトラブルになってしまったとき、この違いがあることを意識してみると、話し合いで解決する糸口が見つかるのではないでしょうか。

岩﨑 崇 植月・岩﨑法律事務所 弁護士

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いわさき たかし / Takashi Iwasaki

横浜生まれ。首都大学東京都市教養学部法学系、慶應義塾大学法科大学院を経て、2012年弁護士登録。弁護士会や自治体での法律相談のほか、「国家戦略特区東京圏雇用労働相談センター」の相談員としてベンチャー企業の労務相談も担当する。簿記、行政書士、FP技能士の資格を取得し、経理、許認可、ファイナンシャル・プランニング、不動産等、関連分野にも造詣が深い。

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