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平安時代もあった「女性キャリアの壁」苦悩の実態 紫式部「源氏物語」好きオタク女子の思いとは?

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しげりゆく蓬が露にそほちつつ人にとはれぬ音をのみぞ泣く(荒れ果てた庭の、茂る蓬の露に濡れながら、私はあなたが来てくれない淋しさに泣いていますわ)

相手は、つれない返事を送ってくる。

世のつねの宿の蓬を思ひやれそむきはてたる庭の草むら(あなたの庭は荒れ果ててなんていませんよ、それくらいの蓬の茂みは普通です。私みたいに世を捨てた人間の庭の草むらを想像してください、荒れ放題なんだから)

菅原孝標女は昔、「田舎の山奥に住んで、光源氏か薫みたいな人が来るのを待ちたいわあ」という将来の夢を日記に綴っていた。その着地点である晩年の風景が、「茂る庭のある家に住んで、女友だちに『ねえ、遊びに来てよ~、寂しいのよ~』という手紙を贈る」ものであったところに、なんだか私はちょっとした切なさと温かさを感じる。

もちろん、光源氏みたいなイケメンは現れなかったかもしれない。しかし「寂しいのよねえ、会いたいわ」と言えるような女性の友人がちゃんといたところには、少しばかりの救いの印象を受けるのだ。

現代にも通じるような普遍性が宿る『更級日記』

1人で『源氏物語』に耽溺していた少女は、仕事や結婚を経験し、晩年はまた1人に戻る。そのときは寂しくて眠れなかったかもしれない。しかしその先でどうか、ぼーっとしながら、彼女が孤独な時間を手紙や物語で紛らわせられていたらいいな、と思うのだ。

彼女の日記には、現代にも通じるような普遍性が宿っている。それはひとりの文学少女が物語に憧れながらその人生を綴った、平凡で、ありきたりで、でもそれゆえ共感できる点がたくさん詰まった日記文学になっているのだ。

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