部下が動かない!上司がしがちな残念な話し方 相手の心をつかむ「言行一致」と「選択肢の多さ」

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私がロンドン・ビジネス・スクールで担当している選択科目「働き方の未来」では、この4年以上、アン・ケアンズとマーヴィン・デーヴィスという2人の偉大なリーダーをゲスト講師として招いている。2人はMBAプログラムの学生たちと一緒に、リーダーとしてどのような道を歩んできたか、あるべきリーダー像がどのように変わってきたか、今後それがどのように変わると思うかを議論し、その際に自分たちのストーリーを語る。

リーダーは常に社員に値踏みされている

ケアンズは、マスターカード社の副会長を務める人物だ。イギリスのビジネス・エネルギー・産業戦略省の非常勤評議員、企業の女性取締役の割合を増やすことを目指す「30%クラブ」の議長も務めている。

学生たちにとっては、憧れの対象であり、重要なロールモデルでもある。2021年5月26日の授業でケアンズが語った内容の一部を紹介しよう。

「私が思うに、リーダーシップの要はリーダーの価値観です。私が決定を下し、メンバーがそれを受けて行動するという決定的な局面がたびたび訪れます。そのとき、人々は『この人はまっとうな人間か』という観点で、私を値踏みします。私は、自分に対して、そしてほかの人たちに対して『正直でありたい』と思っています。それに、厳しい問いを発するために、勇気と強靭な精神を持っている必要もあります。私はリーダーとして、『あまりに安定しすぎた状態は望ましくない』と考えています。自分自身とほかの人たちが精力的に、そして自発的に行動するよう促したいのです。変化を恐れないことが重要です」

デーヴィスは、スタンダードチャータード銀行のCEOと会長を歴任したあと、イギリスの貿易・投資・中小企業担当閣外相を経て、現在は貴族院議員を務めている。また、連続起業家でもあり、金融関係・文化関係のいくつかの団体のトップも担ってきた。

私たちが陥りやすい大きな落とし穴は、制度やしくみにばかり目を奪われるというものだ。この傾向は、リーダーだけでなく、私のような研究者にも見られる。さまざまな慣行やプロセス、アジャイル化の取り組み、給料決定のプロセス、新しいチャットボットやAIシステムにとらわれすぎるのだ。

こうした制度やしくみが重要でないと言うつもりはないが、これらの要素は人々を行動に駆り立てる力を持っていない。データを語っても、感情を司る脳の領域は活性化されない。

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