日本はいつまで「真の民主主義」を維持できるか 中国やロシア並み「専制主義国」が増殖している

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「民主主義」に関する研究は数多くありますが、世界の民主主義の状態を計測した「The Regimes of the World Classification」という研究では、世界177カ国を4つに分類しています。

「民主主義」のレベルの高い方から、「①自由民主主義国(真の民主主義国)」「②民主主義国(最低限の民主主義国)」「③選挙専制国(選挙はあるが実質専制国)」「④閉鎖独裁(独裁国)」です。

2021年時点では、①はG7諸国や韓国、オーストラリアなど34カ国、②はインドネシアやメキシコ、ブラジルなど55カ国、③はロシアやトルコなど60カ国、④は中国やミャンマーなど28カ国です。

①と②の違いがわかりにくいですが、①②とも「民主主義国」ですので、公正で透明性のある選挙の実施は必須条件ですが、①の「真の民主主義国」には「個人と少数派の権利擁護、法の前の平等、立法と裁判所による権力の制御」といった条件が加わります。

このデータを時系列的に見ると、2つのポイントが見えてきます。ひとつは、世界全体で、③④に分類される「専制主義国」が増えていること、もうひとつは、①②の「民主主義国」の中でも、民主主義レベルの高い①の「真の民主主義国」が大きく減っていることです。

まず、④の「独裁国」は、2011年の21カ国から、2021年には28カ国に増えています。もともと分類されていた中国やサウジアラビアなどに、ミャンマーやシリア、イエメンなどが加わっています。③の「選挙はあるが実質専制国」は同期間に2カ国減ってますが、③④の「専制主義国」合計では5カ国増えています。

「専制主義国」増加は歴史的な転換点

ロシアのウクライナ侵攻などもあり、「専制主義国」に対する国際的な批判が高まっていますが、世界全体をみると、これが実態です。10年でたった5カ国増えただけで、たいしたことがないようにも見えますが、第2次世界大戦終結後、「専制主義国」は一貫して減っていましたので、歴史的な転換点と言えます。

「民主主義国」の内なる変化も要注意です。①②をあわせた「民主主義国」は2011年の94カ国から、2021年には89カ国と5カ国減っていますが、中でも、①の「真の民主主義国」は42カ国から34カ国と8カ国も減っています。

ポーランドやポルトガル、チェコなど、欧州でこの傾向が強く見られます。「真の民主主義国」は、第2次世界大戦が終結した1945年にはたった8カ国でしたが、その後は一貫して増え続け、2011年には42カ国になりました。それが減少に転じたわけです。

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