「老いで記憶低下」はただの思い込みかもしれぬ訳 神経科学的研究では、脳細胞は年齢で減少しない

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一方で、内発的報酬は未知の事象を理解することで得られるので、不確実性の高い情報に興味を持つようになります。よって、外発的報酬と比べると「拡散的思考」をとりやすくなります。外発的モチベーションでは、目標を達成するとそれ以上のことをしなくなるアンダーマイニング効果がありますが、内発的報酬は長くモチベーションを保てます。

素晴らしい音楽家になりたいなど何かを目指して努力してきたのに、いざ願っていた職業で稼ぐようになってみると、内発的モチベーションが失われるのもアンダーマイニング効果に近い現象といえます。「ここまで働けば、このくらいの成果が出る」と脳が学習した時点でその先の不確実性はなくなり、将来への期待感が失われるからです。

モチベーションをいつも維持できている人は、決まった仕事やいわれた仕事をこなすだけでなく、自分なりの課題を見つけ、解決していることが多いといえます。より高いレベルでのパフォーマンス発揮につながるため、結果的に周囲からの評価も高くなる傾向にあります。良いサイクルが生まれ、さらにモチベーションもアップするのです。

最低限の仕事しかしていないとモチベーションも下がる

対照的にモチベーションが低いときは、最低限の仕事しかしていないことが多くあります。最低限の仕事をしているときの脳は、不確実性がほとんどなくなった状態です。そのままの状態では不確実性の変化を認識しにくくなり、脳は飽きてしまいます。同時に、モチベーションもだんだんと下がっていきます。

内発的モチベーションを保ったまま行動を起こすには、脳への報酬の与え方も重要です。いわれた(不確実性の低い)仕事をこなし、脳に安心感を与えつつ新しいことにチャレンジするなど、必ず(不確実性の高い)新規なことを求めるよう心がけると不確実性のバランスがとれ、脳がストレスを感じない程度の適度な知的好奇心を保てます。

内発的報酬はモチベーションの維持に重要ですが、他方、脳にとって報酬を受け取る確率が高く安心感も得られる外発的報酬も必要であることに変わりはありません。金銭のような外発的報酬を与えられることで、やる気が出て業務を達成できるという効果もあります。これを一般に「エンハンシング効果」といいます。

次ページ外発的報酬は、短時間で目標達成する場合も役立つ
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