「老いで記憶低下」はただの思い込みかもしれぬ訳 神経科学的研究では、脳細胞は年齢で減少しない
金銭などの報酬ではモチベーションを保つのが難しい
モチベーションに関わる脳への報酬について考えます。脳への報酬のタイプはさまざまですが、モチベーションにとって重要なのは、金銭や他者からの称賛など外部から与えられる「外発的報酬」と、知的好奇心など内から湧き起こるような「内発的報酬」です。
外発的報酬が過剰な適応を招き、結果として内発的モチベーションが低下することを示す研究があります。この現象は一般に「アンダーマイニング効果」と呼ばれます。心理学者エドワード・L・デシやスタンフォード大学のマーク・レッパー教授らの実験によって明らかになったものです。
もともとは知的好奇心や喜びのような内発的報酬によって行動していたものが、お金のような外発的報酬を与えることによって、いつのまにか内発的モチベーションが下がる現象です。最後には外発的報酬がないと、「やっても意味がない」と思うようになります。
ある有名な研究では、絵を描くとリボンと金色の星がもらえるという条件を子どもに与えると、どのような報酬がもらえるかわからない子どもよりも絵を描いて遊ぶ時間が短くなりました。事前にどのくらい報酬がもらえるかわかると、活動そのものに関心がなくなるのです。
外発的報酬は時間の経過とともに価値が低下し、将来的にモチベーションを保つことが難しくなります。
業務や作業を完了するなど、外発的報酬を得るための方法はある程度明確な場合が多いので、脳は報酬を得るために創造的な方法をあまりとりません。金銭的報酬を得るために独自なやり方をしては業務に支障をきたすおそれがあり、それよりは確実な手段でなるべく楽に終わらせたほうがいいでしょう。そのため、外発的報酬では不確実性の低い情報に目を向けやすく、かつ「収束的思考」をとる傾向にあります。
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