「老いで記憶低下」はただの思い込みかもしれぬ訳 神経科学的研究では、脳細胞は年齢で減少しない

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短時間で目標達成をする際にも外発的報酬は役に立ちます。内発的報酬だけでは、目標(いつまでに何を終わらせるなど)の明確さが弱いため、報酬を得るまでに時間がかかることが多いのです。

どちらのほうがいいというわけではなく、状況によってうまく使いこなし、どんな状況においても両方のモチベーションがバランスよく含まれていることが大切といえます。

子どもは「新しいもの好き」の傾向があります。これを学術的に「新奇選好」といいます。幼いうちはすべての情報が新鮮なため、情報への先入観がほとんどありません。そのときの興味に依存して行動が決まるのです。

子どもはあらゆることに対して親に「なんで?」とたずねる時期があります。無知を恥じずにどんなことでも訊き、新しいことを知りたくてしかたありません。そういった意味で、子どもの行動は内発的モチベーションに満ちあふれているといえます。

その後成長するにつれ、脳の統計学習を通して問題に対する最適な解決法を会得するようになると、行動や選択において確実かつ効率的に行おうとします。経験も増えていき、それに基づいて物事を予測できるようになります。

うまくいった体験に基づいて同じものを選ぶクセがある

その一方で、意思決定に過去の成功体験が影響した結果、統計的に確率の高いものが選択される「プライミング効果」のようなことが脳内で起こります。確率の高いものは正解(成功)である可能性が高いからです。

このように、以前うまくいった体験に基づいて、人は無意識に同じものを選択するクセがあります。

こういった情報選択の方法は、無駄なエネルギーを消費せず処理効率を上げるという利点はありますが、慣れているもの、親しみのあるものばかりに目を向けると、いつまでたっても現時点以上の知識や情報を得られません。さらに、可能性の幅を狭めることにもつながります。

また、子どもの新奇選好による内発的モチベーションの向上に対して、成長後の最適で安全な情報の選択は外発的モチベーションを強くします。それによって、子どものようなワクワク感を得ることも難しくなります。

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