「MARCH」と大学を括る人が知らない偏差値の本質 茂木氏の問題提起から偏差値の扱いを考える
このような少科目入試を有名私立大学文系学部が始めた頃は、一科目を入試必須科目から外すと偏差値は5ポイント上昇することが相場だった。外す対象として最も狙われたのが言うまでもなく数学である。現在、私立大学文系学部の入試で数学が必須の大学はわずかだ。有名私立大学が始めたものだから、普通の私立大学は、理念などはかなぐり捨てて偏差値競争に負けないように少科目入試を続々と導入した。
そのような流れでとくに迷惑を被った学問は経済学であろう。「私大経済学部では、数学は不必要」という、世界の中で日本固有の「迷信」をつくってしまったのである。大学関係者が「大学入試科目やその問題は、高校生へ日頃の学びに関するメッセージでもある」ことを忘れ、他大学との偏差値競争や、将来の新入生の確保に埋没してしまった結果として生まれた「迷信」と言えよう。
社会のほうが数学より点数の散らばり具合が小さい
ここから、拙著『中学生から大人まで楽しめる 算数・数学間違い探し』(講談社+α新書)で述べたことを、数式ソフトを使わないように直して、偏差値の定義式やその問題点を述べる。n人で100点満点のテストを受けたとき、n人全員の得点をx1、x2、x3、・・・、xnとする。そして、それらの平均m、得点分布の散らばり具合を示す標準偏差s(s≧0)は、それぞれ以下のように与えられる。
sの2乗
={(x1-m)の2乗+(x2-m)の2乗+・・・+(xn-m)の2乗}÷n
100、80、70、60、40
とすると、
m={100+80+70+60+40}÷5=70(点)
sの2乗
={(100-70)の2乗+(80-70)の2乗+(60-70)の2乗+(40-70)の2乗}÷5
sの2乗=(900+100+100+900)÷5
sの2乗=400、s=20
となる。
(x-m)÷s×10+50 ・・・ (*)
によって定義される。
(80-70)÷20×10+50=55
(70-70)÷20×10+50=50
となる。
入学試験での社会系科目と数学の得点を比べると、社会のほうが数学に比べて点数の散らばり具合が小さいことが普通だ。すなわち、社会の標準偏差sが数学の標準偏差sと比べて小さいことが普通である。
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