1つ目は、今年2月に北京大学の研究者たちが『トランスレーショナル精神医学誌』に発表したものだ。この研究では、マスク着用により、感染リスクは16%低下し、その差は統計的に有意だった。臨床医学では、統計的に有意であることは、有効性が証明されたと同義である。
もう1つは、昨年8月に世界保健機関(WHO)などの研究者が『E臨床医学誌』で発表したものだ。「すべての研究で、マスク着用政策に関連した発生率の急速かつ大幅な減少が報告されている」と記している。
マスクの効用に否定的な研究も複数存在
このような研究結果を知ると、マスクの有効性は明らかで、医学的に公知であると考える読者が多いだろうが、必ずしもそうとは言い切れない。マスクの効用について、否定的な研究も存在するからだ。
昨年2月、韓国のサムスンメディカルセンターの医師たちが、マスクの効果を検証したメタ解析を『医療ウイルス学』誌に発表したが、この研究では、一般人がマスクを着用した場合、予防効果は約20%で、その差は統計的に有意ではなかった。つまり、効果は証明されていないことになる。
さらに、今年1月30日に公開されたマスクに関するコクランレビューの結果は、もっと否定的だった。マスクの感染予防効果はまったくなかった。11の大規模臨床試験をまとめたメタ解析では、マスク着用群で感染が5%減っていたが、これは統計的に有意ではなかった。
コクランレビューは、国際団体コクランが作成する医学論文の総括で、信頼度は極めて高い。
では、どうして「マスク着用の有効性に関する科学的知見」で引用されている研究と、コクランレビューの分析結果が、こんなに違うのだろうか。それは選択する論文の基準が違うからだ。「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定している。
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