FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)はインフレ鈍化を受けて利上げをやめ、利下げに転じるーー。この想定のもと、円高ドル安が予想されていたが、にわかに状況は変わっている。
2022年12月、筆者は「2023年の『ドル円相場シナリオ』はどうなるのか」において、2023年のドル円相場について予想される基本シナリオと上下双方向のリスクを議論した。円高シナリオが大勢となる2023年のドル円相場について、筆者は以下のような懸念を示した。
2月の為替市場では、くしくもこうしたリスク想定がやや現実味を帯び始めているように見受けられる。2月初頭にアメリカの1月雇用統計の力強い結果が公表されて以降、にわかに「利上げは簡単に終わらないかもしれない」という懸念が明らかに強くなっている。
気が早すぎた「利下げ織り込み」
筆者は2022年末からアメリカの利下げ織り込みは性急すぎること、円安の背景には巨大な需給の歪み(貿易赤字)があることなどを背景に巷説で支配的な円高予想とは距離を置いてきた。
1月の「つかの間の円高と正常化タイムの後に来る円安」でも「巷説では2022年の反動としての円高を予想する声が依然支配的だが、果たしてそれほど単純に事が進むのか。貿易赤字は2022年ほどではないにしても、高水準の状態が続く」として、需給面から円安が崩れにくい可能性を強調した。
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