浮かれるアメリカの株価にしっぺ返しはあるか 好調な経済統計の一方でFRBと市場のすれ違い

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アメリカの株式市場は上昇と下落を繰り返している(写真: 2023 Bloomberg Finance LP)
FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「ディスインフレ(インフレ鈍化)が始まった」と繰り返し言及する一方で、1月のアメリカ雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比で51.7万人増(季節調整済)と市場予想の18.8万人を大幅に上回った。2月3日に発表された1月のISM非製造業総合景況指数も2年7カ月ぶりに50割れした前月から回復して、55.2と好調だった。
株式市場もそれぞれのニュースに反応して上昇と下落を繰り返す。アメリカ経済の実態と今後の行方をどうみればいいのか。大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐主任研究員に聞いた。

――1月31日~2月1日に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)の結果を受けて、早期利上げ停止の思惑が広がり、一時株高につながりました。

昨年12月のFOMCでは、2023年に計0.75%利上げを行い、そのペースは緩やかにするとしていた。0.25%の利上げは想定通りで、それをあと2回行うことが示唆されている。また、年末まで利下げはありえないとパウエル氏は発言しており、既定路線を歩んでいる。

ただ、パウエル氏とマーケットの注目点が一致せずにミスコミュニケーションが発生している。パウエル氏はディスインフレの初期段階にあるとしたが、株式市場はディスインフレという言葉に反応した。パウエル氏の発言には続きがあり、家賃以外のサービス価格で上昇の勢いが鈍化していない点を問題視している。

2月3日に雇用統計が発表された後も、パウエル氏はディスインフレに言及しつつ、労働市場の強さから「さらなる利上げが必要になる」と加えている。本来はこれら後半部分を重視すべきだ。株式市場は前半部分を都合のいいように解釈してしまった。

ソフトランディングに向かうことが期待される

――市場予想を大幅に上回る雇用統計が出ましたが、実際にかなり強いのでしょうか。

やさく・だいすけ/2012年、大和総研入社。2013~2015年、財務省国際局国際機構課に出向。2016~2017年、中国国務院傘下の中国社会科学院金融研究所に訪問研究員として在籍。2017年に大和総研に帰任し、金融・資本市場調査担当を経て、2019年から現職(写真:大和総研提供)

1月の雇用統計は非常に強かったが解釈は難しい。季節調整値では50万人強の伸びだが、原数値では減少している。例年、12月から1月は寒波の影響などで雇用者数が減少する傾向が強いが、今年は1月が暖冬となり、雇用者数の減りが少なかったため、季節調整値で強く出た可能性がある。

雇用統計発表前にリリースされた1月のADP全米雇用報告(民間部門による雇用調査データ)では市場予想を下回り、労働市場の弱さが出た。本来なら雇用統計も弱くてもいいはずだが、ややテクニカルな理由で押し上げられているようだ。

実際、昨年1月の雇用統計も当初は50万人のプラスだったが、今回行われた2022年統計の改定で36万人のプラスに下方修正された。来年2月に2023年1月の雇用統計の修正が行われる可能性もある。それでも雇用が堅調なのは間違いなく、アメリカ経済がソフトランディングに向かうことを期待させる結果だ。

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