「治療後の職場復帰」職場と当事者が配慮すること 症状の悪化で再び休業してしまうことを防ぐ

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はじめは現実とのギャップからうまくいかないことも多々ありますが、本人のみならずプライバシーに配慮しつつ「復職後状況報告書」などで周囲の声(職場での様子や業務の進捗、残業の有無等)を取り入れ、産業医等とこまめに面談を行うことで少しずつ目標に近づけていきましょう。

労働そのものに対するサポートとしては、事務作業など重労働を避けた業務にすることや、短時間勤務からはじめること、在宅勤務の割合を増やすことも有効です。

実際に働いてみないとわからない点も多い

疾患によっては特別な措置が必要な場合もあります。例えば大腸がんの手術後で人工肛門がつくられた場合、トイレに近い席に配置換えをするなどの小さな工夫が労働者の助けになることもあります。また定期的に抗がん剤治療のために通院する必要がある方もいらっしゃるため、主治医と連携して治療のスケジュールをもとに業務のスケジュールを調整し、負担なく医療機関に通えるような体制を作ることも重要です。

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このような問題点は、実際に働いてみないとわからない点も多いため、休職期間に「お試し」で出社することで問題点を洗い出すことも有効です。短期間もとの職場に出勤するだけでなく、勤務時間と同じ時間帯に自宅等で軽い業務を行う(模擬出勤)、自宅から職場近くまで移動して一定時間過ごして帰宅する(通勤訓練)こともできます。

なお、参考資料としては厚生労働省が「治療と仕事の両立支援ナビ」という専門のポータルサイトで詳しく各種案内をしており、ガイドラインとして「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」、その参考資料として「企業・医療機関連携マニュアル」を公開しています。詳細な制度や、具体的な様式例がどのようになっているかなどについて整理されていますので、事業者だけでなく、両立支援を考えている方は一度目を通していただけたらと思います。疾患にかかわらず、誰もが自分の意欲に沿った働き方のできる社会になっていけばと願っています。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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