ーーなるほど。まずは、最初の休職のことから聞かせてください。
塩谷:当時は新卒で入った設計事務所で、設計の仕事をしてました。朝8時とか9時に会社に行って、家に帰るのは深夜の2、3時になるのが普通でしたね。
仕事はすごく楽しかったんです。「建築家になる」という目標がありましたし、設計の仕事も好きだった。でも、「私には才能がない」と思ってたので、「人よりも頑張って結果を出さなきゃ!」と、焦る気持ちもありました。
ーー「才能がない」という考えを持ったのは、なにかきっかけが?
塩谷:大学の成績が思うように良くならなくて、劣等感を持つようになったんです。早稲田大学の建築学科に通ってたんですけど、周りの人より頑張った自信はあったのに、うまくいかない。教授からも、「君は絵はうまいけど、建築は向いてないんじゃない?」と言われました。
これだけ頑張ってもうまくいかないのは、自分には才能がないからだろうと。でも、すごく悔しかったので、「同期や教授を見返すために、絶対に建築家になろう!」って強く思っていたんです。
ーー悔しさが、働くモチベーションになっていたと。
塩谷:そうですね。あと、「自分を許せない」みたいな気持ちもありました。職場で先輩に叱られた時も、もともとネガティブなので、先輩から叱られる5倍ぐらい、自分に厳しくしてしまうんです(笑)。「才能ないんだから、人の2倍は努力しないと結果は出せないぞ!」と、自分を追い込んでいました。
そんな生活を続けていたら、就職して1年半くらい経ったある日、朝起きられなくなったんです。
「まだだめ。3カ月休みなさい」
塩谷:その日目を覚ましたら、体中にずっしり、文鎮を乗せられてるような感覚があって。栄養ドリンクを飲んで、なんとか出社するんですが、翌日また起きられない。 会社に行ったら「顔色が真っ白だよ……」って、みんながザワザワしだしたり。そんな体調の悪さが3、4日続きました。
「これはおかしい」と思って、「1週間休ませてください」ってメールを打ってたら、涙が止まらなくなったんです。学生時代も、課題のために11日間家に帰らないとか、3日連続で徹夜とか、よくやってたので。忙しいのが普通だと思ってたんですけどね。