燃調額が転嫁上限を上回ることで発生する逆ザヤは、経済産業省による認可が必要な「規制料金」特有の現象だ(昨年まで沖縄電力など一部の電力会社は、自由料金についても燃調額の上限を設定していたが、すでに廃止を表明している)。
各社は料金改定の都度、当時の燃料の調達状況に合わせて「基準燃料価格」を決めており、上限は業界統一ルールでその1.5倍に設定されている。
そのため基準燃料価格を変更するには、直近の燃料の調達状況に応じて計算をし直したうえで、料金値上げの認可を受けなければならない。
寡占構造のなせる業
4月から6月にかけて、全国の家庭は、電気料金の値上げラッシュに見舞われる。
家庭向け電気料金の過半を占める規制料金について、中部電力ミライズ、関西電力、九州電力の3社を除く大手電力7社は、20%台後半〜40%台前半という大幅な値上げ申請をしている。
経産省の審査により、値上げ幅は多少圧縮されるとみられるが、家計を大きく圧迫することは間違いない。
各社による値上げの要因として大きいのが、電気の使用量に応じた従量料金の値上げおよび燃調額の大幅な引き上げだ。東北電力は、基本料金も引き上げる。
なお、関電や九電は2024年3月期に原発の稼働率が向上し、火力発電の燃料費を軽減できるとして、値上げを見送る。
値上げを表明した電力会社の多くは、原発を稼働できずにコスト高になっている。
大手電力10社の原発関連の費用は2022年3月期の1年間で総額1兆3955億円。うち1基も再稼働できていない、東電など6社の合計額は7600億円近くに上っている。
つまり、売り上げ計上の見通しの立たない原発事業に、莫大な費用がつぎ込まれていることを意味する。このこともまた、電力会社の体力をそぐ要因の1つになっている。
ただし、注意しなければならないのは、大手電力会社が地域での販売シェアの8割近くを握り、圧倒的な寡占状態にあることだ。
燃料高のあおりで競合相手である多くの新電力会社が経営危機に陥ったこともあり、大手電力会社の競争力は相対的に高まっている。
しかも、売電量の多くは企業向けの高圧や特別高圧が占めている。こうした契約は自由料金で、値上げ時に国による認可の必要がない。すでに、大手電力各社は自由料金メニューの顧客に大幅な値上げを通告している。
燃料価格の動向にもよるが、値上げを機に、大手電力各社は24年3月期に大幅な黒字に転じる可能性が高い。まさに寡占企業のなせる業だ。
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