1兆円近い赤字の1つ目の要因として、ロシアのウクライナ侵攻を機に液化天然ガス(LNG)などの発電用燃料の価格が世界規模で空前の水準に急騰したことが挙げられる。
この要因には、電力需要のうち自社での発電で賄えなかった分を卸電力市場から調達した際に、その調達価格が、顧客に販売する電気料金を上回ったことによる赤字分が含まれる。
電力業界特有の「タイムラグ損失」
また、一部の電力会社では「タイムラグ損失」も業績の足を引っ張っている。これは電力業界特有の現象で、電気料金と、それに反映させる燃料価格の算定時期の不一致によるものだ。
例えば今年3月の電気料金を決めるうえで参照するLNGや石炭などの火力発電用燃料費は、昨年10〜12月の全国平均の輸入価格を用いる。
燃料価格が上昇している局面では、電気料金への転嫁が後追いになるため、タイムラグ損失が発生。逆に燃料価格の下落局面ではタイムラグ益が膨らむ。中長期的に見て、燃料価格が一定であれば、影響は中立的だ。
2023年3月期はウクライナ危機も加わって燃料高が進み、タイムラグ損失は第3四半期までに各社で大幅に拡大した。
ただ、足元では燃料高が一服。通期のタイムラグ損失は昨年秋時点で想定していたほど大きくならない見通しだ。
今後、燃料価格がさらに高騰しなければ2024年3月期にはタイムラグ損失は解消し、利益の押し上げ要因になる可能性もある。
赤字の2つ目の要因として、電気料金を構成する「燃料費調整額」(燃調額)が、各社が決めていた上限に達し、これ以上引き上げられないことによる「逆ザヤ」の発生が挙げられる。
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