デサント、「安売り地獄」脱して迎える次の正念場 タウンユース用を強化、国内でもブランド価値高める

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デサントは2018年に経営方針を巡って、大株主の伊藤忠商事と当時の経営陣が対立。伊藤忠が翌年に敵対的TOBで出資比率を4割に高め、創業家出身の社長をはじめとする当時の取締役は大半が退陣した。新社長には、それまで伊藤忠の繊維カンパニーのトップだった小関秀一氏が就いた。

その小関氏が社長に就任して目にしたのは、国内事業の惨憺たる状況だった。

同社は社名でもあるデサントに加え、ルコックスポルティフ、マンシングウェア、アリーナなど、商標権やライセンスを得た海外ブランドの商品も数多く手掛ける。しかし、すべてのブランドで過剰在庫と値引き地獄にあえぎ、国内事業は実態としては赤字だった。

ファミリーセール連発で過剰在庫を処分

理由は旧経営陣の下で目先の売り上げ拡大を最優先していたからだ。

国内で毎年5%ずつ売り上げを伸ばす無理な計画がたたり、小売店の店頭ではシーズン途中で早々と値引き対象になるなど安売りが常態化。それでも売れ残った大量の商品が返品されて過剰在庫となり、その処分で毎年多額の損失を出していたのだ。

本来であれば、小売業者に卸した商品は小売り側が在庫リスクを追う。しかし、実際は返品がまかり通っていた。「人気ブランドでない限り、返品不可なら発注量を大幅に絞られてしまう。それでは社内の売り上げ目標が達成できないので、販売力のある量販店との取引では返品を認めざるを得なかった」(デサント幹部)。

こうして戻ってきた大量の返品在庫は、会員向けのセール催事、いわゆるファミリーセールでさらに値引きして販売。返品在庫があまりに多いため、セール催事はピーク時には年40回以上にも及んだ。ファミリーセールでも売れ残った商品は、東京・御徒町などに店を構える専門の買い取り販売業者に二束三文で叩き売るのが常だった。

実力以上の売り上げを追うあまり、ブランド価値を貶める安売りに明け暮れていたデサントの国内事業。それでも会社が傾かなかったのは、韓国での事業がうまくいっていたからだ。しかし、そのドル箱だった韓国も2019年の反日不買運動で販売が大きく落ち込み、新経営陣は同年6月に新体制が始動してすぐに国内事業の抜本的な改革を迫られた。

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