「目先の売り上げを追うな」「余計な量は作るな」「安売りをするな」ーー。小関社長はこんな指示を出して、社内に染みついた悪しき慣習にメスを入れた。
売れない商品の廃番やカラー展開を減らすなどして、就任から3年間で全ブランドの合計商品点数は約3割減った。小売店との取引慣習も見直し、書面の契約書を作って取引の細かな条件を明文化。原則として在庫リスクは小売店側が負うことも契約書の中にはっきりと明記した。
こうした見直しにより、国内の売上高自体は大幅に減ったものの、セール催事が年数回にまで減るなど赤字処分が大幅に減った分、採算性は大きく改善。2021年度には国内事業が韓国からのロイヤルティ収入を除いても実質黒字化し、2022年度の第3四半期(4~12月)では国内の利益率が10%超にまで改善した。
日本での「ブランド認知度」は5割以下
しかし、小関社長は「別にたいしたことじゃない。今までがあまりに異常で、メーカーとして当たり前の姿に戻しただけの話」だとしたうえで、こう続ける。「本当の改革はここからだ。商品から売り場、広告宣伝まですべてを見直し、一番大事な社名のデサントブランドを国内でも強くて、付加価値の高いブランドに変える」
「滑降」を意味するフランス語からとったデサントは、スキーウェアで一時代を築いたブランドだ。ロゴの三本の矢印は、「直滑降」「斜滑降」「横滑り」を示している。しかし、国内のスキー人口は1990年代前半をピークとしてその後、全盛期の2割以下にまで減少。スキー市場の縮小とともに、デサントもブランドの輝きと存在感を失った。
現在の国内の商品展開を見ると、トレーニング・アスレチックや野球、ゴルフ、バレー、トライアスロン、スキー用など多岐にわたる。それでもブランドの国内売上高は直近で171億円(2021年度実績)。進出してからまだ歴史が浅い中国の418億円(同)、韓国の267億円(同)よりも金額が小さい。ブランドの認知度も韓国では100%近いのに対し、国内では5割を下回る。
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