デサント、「安売り地獄」脱して迎える次の正念場 タウンユース用を強化、国内でもブランド価値高める

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しかも、国内でブランドの売り上げの柱であるトレーニング・アスレチックウェアは、購入者の平均年齢が高く、若者の間では「おじさんたちが着るジャージ」(都内に住む20代男性)のイメージが定着。主力商品でありながら、値引き販売される代表的な商品でもあった。

ではいかにして、ここからブランドを立て直すか。

まずその第1弾として、「ムーブスポーツ」の名称で展開してきたトレーニング・アスレチックウェアを刷新。2023年春シーズンから若者を意識したデザインやシルエットへと全面的に変更した。広告宣伝には若い世代で人気が高いスケートボードやBMX、クライミングの有名選手らを登場させ、購入層の大幅な若返りを目指している。

そして、ブランド再構築の目玉と位置付けるのが、冒頭で登場した機能性を売りにしたタウンユース用の「オルテライン」シリーズの商品群だ。

日本でもアウトドア・スポーツと普段着の境目が薄れ、会社員がアウトドアブランドのジャケットを羽織って通勤する姿も今では珍しくなった。そこでデサントもファッション性の高い商品を前面に打ち出し、街着需要を取り込みつつ、ブランドの認知度やイメージを高めようというわけだ。韓国や中国でデサントが成功したのとまったく同じ戦略だ。

「2年は我慢。絶対に値段は下げない」

高い機能性と品質で大ヒットした水沢ダウン。今後は、こうした独自性があって高くても売れる商品の開発に最重点を置く(デサント提供)

実際、国内でも街着用途でヒットした商品はある。2010年冬季五輪の日本選手団の公式ウェアとして開発した「水沢ダウン」は、その機能や国産の高い品質、都会的なデザインが支持され、服にこだわりを持つ男性たちの間で大ヒット。10万円以上するにもかかわらず、毎年冬前に完売する人気ぶりだ。しかし、それに続く魅力的な商品を欠き、ブランドとしての人気にはつながらなかった。

それだけに、タウンユース用の高機能ウェアを戦略の柱に据えた今回のブランド再構築には並々ならぬ力が入る。今後、直営店を順次改装して商品をより効果的に展示し、広告宣伝にも多額の資金を投じる計画だ。また、秋冬もアウターを中心に「オルテライン」シリーズの商品ラインナップを大幅に強化する。

ただし、こうした分野では、ザ・ノース・フェイスやアークテリクスといった高い人気を誇る有名アウトドアブランドがライバルとして立ちはだかる。デサントがそこに割って入るのは、決して簡単な話ではないだろう。

それでも小関社長はこう言い切る。「デサントを日本でもプレミアムなスポーツブランドにする。今年と来年はそのための我慢の年。いい商品を出し、たとえさほど買ってもらえなくても、歯を食いしばって耐え忍ぶ。絶対に値段は下げない」

長年続いた安売り地獄から抜け出し、いよいよ国内でのブランド復権を目指して、大きく動き始めたデサント。経営改革はここからが本当の正念場だ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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