「認知症で親の財産凍結」子の"相続地獄"避ける策 「介護費用」「空き家となった実家」はどうなる?

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実家を売却しないとすれば、貸すのか? 取り壊すのか? 新たな経営をするのか?

売る以上に大変な意思決定が必要ですが、認知症ではそれもできません。家族側に余程の貯えがあれば別ですが、通常はそんな余裕はありません。だから、それは、どこの家庭でも起こりうる、今そこにある危機なのです。

親が貸家・アパート住まいなら、これらの問題はないでしょうが、逆に、実家を売って入居一時金を工面するという手段もないことになります。

親の自宅に子どもが同居しているときは、自宅は売れません。この場合、施設への入居一時金の工面が別途必要となり大変です。

多くの親が口癖のように「子どもに迷惑をかけたくない」と言っているはずなのに。何も対策をしないまま親の判断能力が失われると、子どもにはこんな重い負担が待っています。そのしわ寄せは親自身にも及びます。「まだ生きているんです」、なのに自分の財産がままならず。サービスのよい施設にも入れません。

これらを、困らないようにする! そして、できるだけ安くシンプルに! そのポイントは“認知症になる前の対策”に尽きます。

「介護」と「相続」を分けて考えたことによる不幸

それで、従来の相続対策に欠落していた「財産凍結を回避」することができます。また、その過程で主な財産が明らかになります。なんといっても本人はまだ生きているのですから、財産の所在は明らかです。その結果、親も得をするので協力が得られて、「相続対策」までもシンプルにできる……これまで誰も言わなかった一挙両得の対策をお届けします。

相続の手続きは面倒なものです。そのうえ手続きを間違えると、とんだ遠回りになってしまいます。だから、そうならないように、段取りを考えます。

たとえばお茶を淹れるなら、カップを出すより先に湯を沸かす準備をします。その後でお湯が沸く間を利用して、カップの準備をする……これが長年の経験で得た常識です。この常識は、何度も経験した結果、無意識にも合理性な手順が作られます。

しかし相続については、法律も社会も大きく変化してしまいました。昔は「長男が相続するもの」で皆納得していたので簡単でした。ところが、相続への権利意識も高まり、関係者全員を納得させるのは大変です。

分けるためには財産を明確にすることが重要です。その明細は生前にはわからないため、今起きた目先の相続への対応に忙殺され、合理的な手順が形成されないのです。本来は“先に”すべきこと、それが「先にお湯を沸かす」にたとえた、「認知症対策」です。

次ページ「相続前10年前後に起きる認知症への対策」が大切
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