安倍首相と黒田日銀総裁の「深刻な距離感」 「アベノミクス3年目」で高まるリスク

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そこで図を作ってみた。まず、右は景気回復を優先、左は財政節度を優先という軸を考える。次に上は金融政策を重視、下は成長戦略を重視という軸を加える。その結果として、経済政策をめぐる4つのグループが浮かび上がるが、それぞれが「第1の矢~第3の矢」のいずれかを支持することになるので、関係者の誰もがアベノミクスに反対できないし、しかも仲間割れが起きにくいという構図が浮かび上がってくる。

いわば、「和洋中豪華ディナーセットを作るぞ」ということになったために、和洋中すべての料理人が文句を言えなくなったようなものである。

今まではそれでよかった。しかし財政再建という中長期の目標がちらつき始めたことで、同じ第1の矢を重視するリフレ派とインタゲ派の対立が目立ち始めた。これから先、政府は2020年のプライマリーバランス黒字化への道筋を示すことになっている。その過程において、対立は徐々に深まっていくのではないかと思う。

対立先鋭化へ、その時マーケットは?

この辺の思考経路は、コロンビア大学の伊藤隆敏教授の著作『日本財政「最後の選択」』(日本経済新聞出版社)を読むと良くわかる。同書のシミュレーション結果はいたってシンプルで、「消費税率は少なくとも15%まで引き上げなくては、2020年代半ばに財政危機が起きるケースが多い。消費税率を20%まで引き上げれば、ほとんどのケースで維持可能」というものである。

これを読んで「8%でもキツイのに、20%なんてとんどもない!」と考えるか、「成長率や利子率がどうなっても、消費税20%で財政破綻が避けられるのならいい話じゃないか」と考えるかは、読者諸兄の間でも意見が分かれるだろう。たぶん安倍首相は前者であろうし、黒田総裁は後者の立場であるものと推察する。

伊藤隆敏教授は、黒田財務官時代の財務省で副財務官を務めていたことがある。お二人は「インフレターゲット(インタゲ)でデフレから脱却できる」「それとは別に財政再建は必要である」と考えている点で一致している。黒田総裁の胸中を知りたかったら、伊藤教授の本を読むのが良い。

逆に安倍首相の胸中を推察するには、官邸の本田悦朗参与の言動に注目するといいだろう。安倍=本田ペア(リフレ派)と黒田=伊藤ペア(インタゲ派)の考え方はかなり差があるように見てとれる。

さて、現状では物価安定目標2%の達成は本年度中には難しく、日銀はいずれ目標時期を延期するか、あるいは追加緩和を実施するかという決断を迫られそうだ。だが、今月は統一地方選挙があることを考えると、追加緩和は難しい。かといって、どうやって目標時期を後ずれさせるのか。

そのうちに外国人投資家の間でも、「あれっ?政府と日銀の考え方には、ずいぶん差があるじゃないか」と気づく人が増え始める。その時点で、今の円安株高の流れは一時的に大きく押し戻されるのではないか…。老婆心ながら、新年度はくれぐれもご用心召されよと申し上げておこう。

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