日本の既存住宅「省エネ対策」が遅れる残念な事情 データスペースエコノミー時代のデータ戦略

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省エネ対策でまず必要なデータの活用(写真:th0852/PIXTA)

電気・ガス料金の高騰が家計を直撃するなかで、省エネ性能に優れた住宅を求めるニーズが高まっている。

新築住宅では、省エネ基準の適合義務化が2025年から実施されるほか、東京都でも新築住宅に太陽光発電システムの設置を義務付けるなどの対策が講じられた。住宅メーカーやマンションデベロッパーも省エネ住宅の供給を積極化しており、年約80万戸の新築分野では省エネ住宅の選択肢は広がっていくだろう。

問題は約5000万戸という膨大な住宅ストックの省エネ対策をどう進めるか。既存住宅は建て方や築年数などで窓や壁の断熱性能が異なり、冷暖房・給湯設備の種類も使い方もバラバラだ。住宅の省エネ改修を行うにしても、限られた予算の範囲内で効果的な対策をどう講じたらいいのかを判断するのが難しい。

課題解決のカギを握るのが「データ」である。

まずは、既存住宅の省エネ性能を所有者や居住者に知ってもらわなければ省エネ対策も進まない。エアコンなどの電気使用量や室内外の温度センサーなどのデータがあれば、客観的な事実に基づいて的確な省エネ対策を講じることも可能になる。これからのデジタル社会では、住宅、自動車など、あらゆる分野で「データ」活用が重要な役割を担う「データスペースエコノミー」が発展していく。はたしてデータ活用で、既存住宅の省エネ対策は進むのか。

進まない「エネルギー使用の見える化」

「省エネ対策の第一歩は、エネルギー使用の見える化。政府のエネルギー基本計画でも、2030年までに5000万戸の住宅にHEMS(ヘムス:家庭用エネルギー管理システム)を設置する目標を掲げているが、HEMSの普及率は2020年時点で1.5%にとどまっており、このままでは政府目標の達成は絶望的だ」(一般社団法人日本エネルギーパス協会の今泉太爾代表理事)

HEMSは、家庭におけるエネルギー管理の「司令塔」を担う装置で、電気製品ごとの電気使用量や太陽光発電システムの発電量などの推移を記録・確認できる。2009年に家庭での太陽光発電で余った電気を電力会社が買い取る「余剰電力買取制度」が始まったことで、屋根に太陽光パネルを設置した「スマートハウス」が登場。それに合わせてHEMSの導入が進み出した。

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