日本の既存住宅「省エネ対策」が遅れる残念な事情 データスペースエコノミー時代のデータ戦略

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HEMSの「つながらない」問題に関連して、2022年8月に新たな動きがあった。IT・エレクトロニクス産業の業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)と、HEMSの標準通信規格団体のエコーネットコンソーシアムが協力して「新サービス創造データ連携基盤検討会(委員長・白石奈緒樹AIoTクラウド・シニアフェロー)」を立ち上げた。目的は、クラウド経由でデータ連携できる環境を整えようという取り組みである。

これまでは住宅にHEMS機能を内蔵したコントローラーを設置し、エアコンなどの情報家電機器をつないで操作できることを目指してきたが、最近の情報家電機器はインターネット経由でメーカーが管理するクラウドにつながってスマホやスマートスピーカーで操作できる製品が増えている。その結果、住宅にHEMSコントローラーを設置しなくても、スマホアプリを使って電気使用量を調べることも可能になっている。

しかし、居住者にとっては情報家電機器ごとに専用アプリでチェックするのは面倒だ。各メーカーのクラウドから必要なデータを集めて一元的に情報を管理できる「HEMSアプリ」のようなサービスが必要になる。「メーカーとしてもHEMSコントローラーを各住宅に設置するよりアプリで管理したほうが機能拡張も含めて対応しやすい」(白石氏)。

検討会では、それを実現するための技術仕様を今年度中に定める予定だが、そうしたサービスが、いつ実用化できるのか。HEMS「つながらない」問題も10年以上前から指摘されて解決できなかったわけで、GHG削減目標の2030年まで残された時間は少ない。

実際に運用するうえでの課題が多数

データ連携基盤が技術的に実現しても、実際に運用するにはさまざまな課題がある。

エアコンなどの情報家電機器がどの住宅に設置されているのかを特定できなければ、各メーカーのクラウドから必要なデータを集めて住宅全体の電気使用量をまとめることができない。そのためには、すべての住宅に共通ID(個別番号)を付与して、紐づけする必要がある。

すでに国土交通省では「不動産ID」を導入することを決めているが、普及が進んでいないため利用するメドが立たない。JEITAでは、住まい手の情報を生成するためのまとまり単位で「イエID」を設定する方向で検討を進めている。

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