日本の既存住宅「省エネ対策」が遅れる残念な事情 データスペースエコノミー時代のデータ戦略

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新しいアプリやサービスを開発できる技術者の問題もある。2022年11月に三菱地所は、スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」で、LIXILのHEMS機能付きコントローラー「Life Assist2」のサポートを開始したが、この連携を実現したのが2017年創業のベンチャー企業、mui Lab(ムイラボ、京都市中京区)だ。

「HOMETACTのIoTプラットフォームはアメリカのYonomi社製で、これにLIXILのHEMSを連携できる日本のIT企業を探したものの見つからず、当社に行き着いたようだ」(mui Lab大木和典社長)。

大木氏は、日本企業の新規事業担当としてアメリカで働き、帰国して起業。アマゾン、アップル、グーグルなどが進めるスマートホーム規格「Matter」の標準化団体にもいち早く参加してMatter対応の製品を開発しているが、アメリカで働いてきた経験から日本のIT技術力の現状に不安を感じているようだ。

独自開発のスマートホームサービス「Space Core」を提供するアクセルラボも、今年1月にMatterの標準化団体に参加したが、「理事会に参加できる会員29社のうち日本企業はゼロ」(青木継孝取締役CTO)。標準化仕様策定に参加できる会員もアクセルラボ、mui Labのほか、三菱電機、パナソニック、東芝など日本企業は9社にとどまっている。

JEITAでは「国内でのデータ連携基盤を構築しながら健康機器や自動車との連携を行いつつ、北米を中心に標準化が進んでいるMatterとの連携方法を見据えながら、世界基準に沿った新たな市場創造を目指す」考えだが、世界的にスマートホーム市場が拡大し始めたときに技術開発競争に勝てるのだろうか。かつてパソコンや携帯電話でも、世界標準製品が日本市場に押し寄せたときに日本独自規格製品が駆逐された歴史もある。

運用データを外部に出したがらないメーカー

こうした技術的な課題以上に、データ連携基盤をいかに活用するのかが重要だ。製品のIoT化が進んだことで、メーカーは稼働中の製品のデータをインターネット経由で収集できるようになった。しかし、これらの運用データは外部には公表していない。HEMS「つながらない」問題の背景にも、メーカーが運用データを外部に出すことに抵抗感があるからだろう。

電気自動車(EV)のバッテリーに関する運用データも、自動車メーカーは外部に出していない。DeNAが2022年3月に三菱自動車工業との協業で、法人や地方自治体などがEVを本格運用するときに必要な充電・運行プラットフォームの開発に乗り出したが、EVのバッテリーデータの提供に応じたのは三菱だけだった。EVは、バッテリーの劣化状況や外気温などによって充電時間や走行距離が異なるため、運送会社などが大量のEVを効率的に運用するにはバッテリー情報が不可欠というが、自動車メーカーはデータ提供を拒んでいる。

ここで、日本に「外圧」が働き始める。2019年に仏独政府が共同で国際データ流通基盤「GAIA-X(ガイアエックス)」構想を打ち出し、2021年にはドイツ発で自動車の生産工程におけるCO2(二酸化炭素)排出量などのトレサビリティを実現するためデータ連携基盤を構築する「Catena-X(カテナエックス)」プロジェクトが動き出したのだ。

EUでは2024年1月からバッテリー規制が導入される予定で、EV製造後のバリューチェーンに関するデータを管理し開示するのにCatena-Xが活用される。EVのバッテリーデータを開示しなければ、EU域内でEVを販売できなくなるため、日本自動車工業会でも2022年度からトヨタ自動車の山本圭司執行役員をトップとする次世代モビリティ委員会で協議を始めた。具体的な内容は「各社の経営に関わる話で非常にセンシティブな問題なので現段階では開示できない」(自工会広報)としている。

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