イーロン・マスクの思考を生んだ幼少期の愛読本 ブッ飛んだ未来像を描ける人になるための手法

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まず空想し、次に空想したものを作り出し、それが実現した世界を生きる。人類はこのサイクルを繰り返し、「SFになる」ことで進化してきました。僕ら自身がSFになろうとすることは、未来を引き寄せることに等しいのです。

SFにまったく興味がない人でも、「アンドロイド」「ロボット工学」といった、SFから生まれた言葉を普通に使っているし、そこから恩恵も受けています。

言葉を創造することはSFに限らず、フィクションの力のひとつです。たとえば、シェイクスピアは造語の達人で、「fashionable(オシャレな)」「bedroom(ベッドルーム)」「critic(批評家)」といった、今ごく普通に使われている言葉の中にも、彼が作品で初めて使ったとされる言葉がたくさんあります。

フィクションなんて自分の生活に関係ないと考えているとしたら、それはとんでもない誤解です。フィクションは現実と密接な関係があるどころか、僕たちが生活している現実の土台は、フィクションによってかたちづくられているといっても過言ではありません。

現実とかけ離れた空想も、それを実現したいという人間の欲望と結びつけば、大きなエネルギーを生み出します。そして、どんどん現実化され、科学技術として積み重なっていきます。「ただの文字列」が現実に猛烈な影響力を及ぼし、現実は放っておけばどんどんSFになっていくのです。

「SF格差」が拡大していく

実際、グローバルなビジネスシーンでは、驚くほど鮮やかにSFを使いこなしているリーダーが数多く存在します。ビジネスの分野だけでなく、政治家やアクティビスト、さまざまな領域のオピニオンリーダーにも、ビジョンを語り、コミュニケーションを深めるための手段としてSFを使いこなす人が増えています。

ひるがえって日本では、なかなかフィクションを使いこなすというアイデアが広がりません。これはけっこう深刻な問題なんじゃないかな、と僕は心配しています。

デジタル社会の問題点のひとつに、デジタルデバイド(情報格差)があります。社会のデジタル化が急速に進んだ結果、スマホやパソコンなどの情報端末を十分に使いこなせない人は、使いこなせる人に比べると、得られる情報の量も質も圧倒的に下がり、それがひいては経済格差を生み出してしまうことが社会問題になっているんですね。

同様に、今後は「SFを使いこなせるかどうか」によって生じるSFデバイド(SF格差)が拡大していくことになるのではないでしょうか。

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