ビジネス界が突如「SF」に注目し始めた納得の理由 商品や事業開発に使える「SFプロトタイピング」

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SFはこれまでも多くのイノベーションを促進してきた(写真:metamorworks/iStock)
SFのようなことが現実世界で起こるわけがない。あなたはひょっとしてこう思っていないだろうか? しかし、よく考えてみてほしい。私たちの生活を大きく変えた新型コロナウイルスの蔓延や、ロボットや人工知能(AI)の発達など、私たちが思いもよらなかった物語のようなことは現に起きている。
こうした中、ビジネス界で今注目を集めているのが、「SFプロトタイピング」と呼ばれる手法である。これはSFを通じて未来を試作、すなわち、プロトタイプし、そこに照準を合わせて製品や事業開発、あるいは組織の変革を行う手法だ。SF的ビジョンを持つとどんなことが可能になるのか。科学文化作家の宮本道人氏らの共著『SFプロトタイピング――SFからイノベーションを生み出す新戦略』から紹介する。

SF作品はコロナ禍を彷彿させるものも

突然だが、ひとつ問いかけてみよう。あなたはコロナ禍を予想できただろうか?「ウイルスで誰もが家にこもってリモートワークに明け暮れる未来が突然来るかもしれない」などとコロナ以前に主張していた人がいたら、「そんなことありえないのでは?」と一笑に付していたのではないだろうか。

一方、SF(サイエンス・フィクション)作品のなかには、コロナ禍的な状況を予測できていたものがしっかりとある。1956年にアイザック・アシモフによって書かれたSF小説の古典『はだかの太陽』では、ウイルス感染を恐れて自宅に引きこもりリモート通話でコミュニケーションを取って暮らしている人類の姿が描かれている。もっと最近の例では、2010年に高嶋哲夫によって書かれたシミュレーション小説『首都感染』で、都市封鎖をしてパンデミックに立ち向かう人々の姿が描かれている。

実際にそのような状況を想定して動けていたら、例えば巣ごもり需要を見越した商品を開発したり、組織を在宅勤務しやすい状態にいち早く整えたりして、あなたはいま大成功できていたかもしれないし、大勢の人がそれに助けられていたかもしれない。未来予測とはそういうものだ。実際のところ、その予測がSF的か現実的か、なんて区分けは、後になってみないとほとんどわからない。

未来はつねに不確定で、ゆらいでいる。蓋然性の高い未来を想定しているだけでは、突如として訪れる大きなゆらぎに対処することはできない。誰かの予想した未来像を鵜呑みにするのではなく、自ら「予想外」の未来を予想する。そうすることで、斜め上の社会変化が起きたときに生き抜くことができる。

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