ビジネス界が突如「SF」に注目し始めた納得の理由 商品や事業開発に使える「SFプロトタイピング」

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日本でも、ドラえもん、鉄腕アトム、星新一のショートショートなどに影響されて実業家・研究者・技術者になったという人は多い。ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義は、ペッパーを「世界初の感情を持つロボット」として売り出したとき、自身への鉄腕アトムの影響を述べている。

これらはSFが直接的に技術イノベーションに貢献している例だが、一方で、SFには社会の価値観を大きく前進させる力もある。ここではその一例として、女性の社会活躍への影響を挙げよう。

例えば、宇宙飛行を行った初めてのアフリカ系アメリカ人女性であるメイ・ジェミソンは、キャリア選択においてTVドラマの「スタートレック」シリーズのウフーラというキャラクターに影響を受けたことを明らかにしている。ウフーラは、アメリカのTVドラマ界で、初めてメインキャラクターとして活躍したアフリカ系女性キャラクターである。

ほかの例では、女性の尊厳が侵害されるディストピアを描いたマーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』にも触れておきたい。この本が書かれたのは1985年だが、2017年にドラマ化された際、本作は大きな話題を呼んだ。#MeToo運動や反トランプ運動と重なり、ムーブメントの一部となったのだ。女優のエマ・ワトソンがこの本をパリのさまざまな場所に100冊隠し、そのことをツイートするといった活動を行ったこともあった。

インテルの未来学者が使い始めた言葉

こうしたSFが生み出す発想力を、より積極的に利用しようとする試みが「SFプロトタイピング」であると言えよう。この単語を明確に使い始めたのは、インテルに所属する未来学者、ブライアン・デイビッド・ジョンソンである。

ジョンソンが2011年の著書『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』の中でこの概念を紹介して以降、似たようなフレームで行われる取り組みが、広くSFプロトタイピングと呼ばれるようになっていった。

SF活用の意義を早くから認知した層としては、コンサルティング業界、軍事業界、学術業界などが挙げられる。アメリカでは、2012年にSFを用いたコンサルティングを行うSciFutures という会社が立ち上げられた。

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