上手な文章をスラスラ書く人「メモを重視する」訳 「気になったことは書き留める」が文章上達の鍵

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では、私はどうだったのか。申し訳ないので口にはしませんでしたが、5分もかからずに感想文を書いていたのでした。もうおわかりかもしれません。理由は簡単で、「素材」をしっかり「メモ」していたからです。

あとで感想文を求められることがわかっているのですから、「素材」を用意しておけばいい。そこで、学校の入口から手にしていたスマホにどんどんメモを入れていきました。

保護者の男女バランスはどうか、受付の対応は、子どもたちの下駄箱の様子、教室の壁には何が貼ってあるか、先生が放った気になる一言、印象的な子どもの行動……。それこそ、素材となる「事実」「数字」「エピソード・感想」を意識しながら、どんどんスマホにメモしていきました。

これだけですでに大変な量です。300文字を書くなど、なんでもありません。最も強く印象に残った「事実」を書き、そこに自分の感想をかぶせておしまい、でした。ささっと5分もかかりません。学校への提出物は手書きですので、清書を妻にお願いしました。

なぜ毎月1冊、本が書けるのか

小学校の授業参観といえば、それなりに非日常ですし、印象に残ることもたくさんありそうです。ところが、やはり忘れてしまう。だから、何を書けばいいのか、ということになる。改めて、「素材」を「メモ」することの重要性を、強く認識するようになったのでした。

『メモする・選ぶ・並べ替える 文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

皆さんにもぜひ知ってほしいことは、「素材」がなければ書けない、ということです。そのためにも、どんどん「メモ」を取っていく。それを、文章の「素材」に活用していく。「素材」さえあれば、怖くはありません。どんなに長い文章でも、です。

著者に代わって本を書くブックライターという仕事もしている私がまったく困らないのは、本の内容、すなわち「素材」は著者へのインタビューで獲得することができるからです。

1冊につき、おおよそ10時間ほどインタビューをします。この内容こそ、すべて本の「素材」になります。これだけの量になると、さすがに「メモ」は取れないので、ICレコーダーで録音し、専門の業者さんにインタビュー内容をテキスト化してもらっています。

本の「素材」が詰まったテキストがすでにある、ということ。あとは、この「素材」を使って、本を構成していくのです。

月に1冊ずつ本を書けるのは、「素材」は著者が持っているから。それをインタビューで引き出せばいいから。

その意味では、書くこと以上に大事なことは、聞くことだったりします。いい「素材」を聞くことができなければ、本は作れないから。聞いていない話を勝手に創作することはできないからです。

それほどに「素材」は重要なのです。

発想転換 文章力とは実は「メモ力」であると知る
上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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