人気白熱の「体験学習」、子どもの事故をどう防ぐか スキーや川での事故、性犯罪…こども家庭庁の役割も

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この事故で、元園長は、ライフジャケットを着用すべきであったことやあらゆる情報収集をして安全確保すべきだったとの責任で、刑事裁判業務上過失致死傷罪(2016年)、民事裁判過失責任法人使用者責任(2018年)の判決を受けている。

吉川慎之介記念基金では、慎之介くんの事故をきっかけに「社会全体で防ぐ取り組みが必要」と、愛媛県西条市でライフジャケットレンタルステーションを設ける取り組みや、資格認定講座「子ども安全管理士講座」を開始。

吉川優子さんは、裁判で事故を起こした保育士たちが「これまで安全について学ぶ機会がなかった」と証言したことを聞き、安全について学ぶ機会をつくりたいと資格認定講座を開設したという。専門家の分析や事故の遺族による事例から、予防のための注意事項や脳震盪が疑われる場合の対処の仕方などを掲載した教科書をウェブサイト上で公開している。

死亡事故や障害の残る重大な事故も心配だが、長期的な影響をもたらすという意味では、体験学習における性被害も深刻だ。

体験学習では安全の確保のためにもそれなりに人手が必要になるため、ボランティアスタッフなどを臨時で募集することも多い。

2020年に、ベビーシッターのマッチングサービスであるキッズライン経由でベビーシッター登録をして活動していた男性が、預かった子どもにわいせつ行為を行って逮捕されるという事件があった。その被告は、キャンプのボランティアスタッフで、寝ている男児に犯行を及んでいた。

今西医師は「性犯罪の被害者の多くは、トラウマを抱え、数十年単位で精神病や希死念慮を患うこともある」と話す。

「事故予防はマニュアルをもとに研修するとしても、塾の経営者としては、臨時に雇う際などに悪意をもった性犯罪加害者を紛れ込ませない方法があれば知りたい」(花まる学習会の高濱代表)というのが事業者側の本音だ。

複数の目を入れ、子どもにも知識を

しかし、性犯罪の防止はそう簡単ではない。性犯罪等の加害者治療にあたっている斉藤章佳さんは「事業者が加害者を見抜くことは、はっきり言って無理」と断言する。

加害者は「グルーミング」と言い、信頼関係を築いてから犯行に及ぶため、「知らない人についていかない」などの注意も意味をなさないという。

性暴力で教員免許を失効した教員については、免許再交付について都道府県教育委員会が可否を判断できるようになる法律が2021年に成立。キッズライン事件を受けてベビーシッターについても行政処分歴がデータベースに掲載されるなどの法改正が進んだ

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