人気白熱の「体験学習」、子どもの事故をどう防ぐか スキーや川での事故、性犯罪…こども家庭庁の役割も

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花まる学習会の高濱正伸代表(写真:筆者撮影)

26日の会見にも登壇した花まる学習会の高濱正伸代表は、学習塾を運営する中で「野外体験」を年間1万人に提供してきた。その中で、安全面にはさまざまな配慮をしてきたという。

たとえばサマースクールは、複数時期にわたって年間5000人もの子どもが参加する。これだけの規模で子どもたちを連れていくうえで、どのように安全対策をしているのか――。

分厚い安全対策マニュアル

「(野外体験を)30年前に始めて、まぁまぁケガは起こりました」

高濱代表はこう振り返って語る。10年ほど実績を重ねた段階で、どのような場面でケガをするのか、社内で検証を始めたという。

「たとえば夏の野外体験。大人は普通に川が危ないと思っているので、川では子どもたちをすごく気をつけて見ています。ところが宿舎にもどって、夕飯後に部屋の押し入れではしゃいでいて子どもが落っこちるとか、夕方の時間帯が圧倒的にケガをしやすいことがわかったんです」

そこで夕食後に目を離さないようにしたところ「ケガの件数は劇的に減った」という。

こういう場面では、こういうケガをする。冬だと、子どもは靴までずぶぬれで冷え切っていても遊んでいる最中はあまり気にしないので霜焼けになったり風邪をひいたりしやすいーー。こういったことを、分厚いマニュアルにまとめ、下見はもちろん入念にするほか、毎回スタッフに研修も実施するようになった。

そもそも、専任の社員も10名ほどいて、野外体験への力の入れ方は他の塾とは一線を画す。そこまで野外体験に力を入れる理由について、高濱代表は「直感的なところもありますが、あえて言語化すれば思考力につながるためです。自分が熊本出身でカブトムシをとったり、走り回っていたりしたことも原体験として大きい」と語る。

小学生の事故、交通事故の次に溺水が多い

昨年3月に開かれた「子供の事故防止に関する関係府省庁連絡会議」。消費者庁消費者安全課が提出した資料「子どもの不慮の事故の発生傾向」によれば、小学生の不慮の事故の場合、乳幼児の窒息などと異なり、交通事故の次に溺水が多くなっている

小児科医・新生児科医の今西洋介医師は、「夏はライフジャケットを装着しない溺水事故が多く、冬はヘルメットをつけずにスキーやスノボをしての事故があります。頸椎損傷からの寝たきりの事例もあります」と指摘する。様々な体験をさせたいものの、子どもを送り出す親の不安はもっともだ。

厚生労働省は不慮の事故など予防可能な子どもの死を防ぐため、令和2年度から、都道府県内の複数の関係者で死因等の検証を行い、効果的な予防策を導き出す「予防のための子どもの死亡検証(Child Death Review:CDR)体制整備モデル事業」を開始している。

昨年12月に開かれた「Child Death Reviewシンポジウム」では、一般社団法人吉川慎之介記念基金の代表理事の吉川優子さんが登壇。2012年、愛媛県西条市にある私立幼稚園でのお泊り保育で、水遊び中に川の水が増水し、数名の子どもたちと流され、吉川さんの子ども、慎之介くんが亡くなった。

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