課題感を持つのは記者会見を開いた4者だけではない。
昨年12月15日には、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが「子どもの『体験格差』実態調査中間報告書」を公表。全国の小学生の保護者2000人強へのアンケート調査で、経済的に厳しい家庭の子どもの約3人に1人が、学校以外での体験機会が何もないことがわかった。現在の経済状況が厳しい保護者ほど、自身が小学生だったころの体験機会が少ないといった結果も得られたという。
ただし、体験学習は、屋外や自然の中で実施されることが多いだけに、教室内での学びよりも事故などのリスクが高い。十分なスタッフ数や専門家による関与を前提とすると、どうしても費用は膨らみがちだ。
そのため、経済的にも時間的にも余裕がある家庭のみが享受できることになってしまっているのでは――。これが「子どもの体験格差解消プロジェクト」や「子どもの『体験格差』実態調査中間報告書」などの動きにつながっている。
「親のいない野外活動」などでどう安全を確保するか
実際、事故などのリスクについて気にする親は少なくないだろう。
筆者は前回記事で、子どもたちが海などで自然体験ができる施設やサマースクールを取材し、紹介した。その記事への反響で、「類似の活動をしている団体もあるが、安全対策ができているのか心配になる」という声をたびたび聞いた。
ある子ども向けの合宿にボランティアスタッフとして同伴した経験を持つ母親は「他のボランティアスタッフは大学生などでしたが、バス移動の際に駐車場で子どもたちが走るのを誘導せずに、文字通り見ているだけ。子どもの突発的な動きなどを予測しておらず、あぶなっかしくてしょうがない。こういうキャンプに自分の子を行かせたくないと思った」と話す。
長距離を移動したり、宿泊を伴ったりすることがあれば、点呼や誘導などの安全管理も必要となる。自然の中で遊ぶ場合は、ケガをする可能性も上がり、天候の見極めや虫や動植物に関する知識も必要だ。
冒頭の困難を抱える家庭向けのプログラムをはじめ、無償や様々な価格帯で体験学習の選択肢が増えることは良いことだが、冬のスキーや雪遊び、夏の川遊びや海での活動など、自然の中でのプログラムを実施するうえでは、どのような配慮や対策が必要なのだろうか。
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