毎日フラッシュバックする「宗教虐待」の心の傷 宗教2世を苦しめ続ける「時間の献金」と体罰

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ーーエホバの証人は輸血の禁止や選挙に行けないなど、禁止や制限事項が多くあります。宗教から離れた今はそうした教えからは自由になったでしょうか。

宗教を離れた後もエホバの証人の習慣や考え方は自分の中に残っています。刷り込まれているのです。「この人、自分となんか似ているな」と好きになった女性が、親しくなってからエホバの信者だとわかったということがありました。幼い頃から理想とされる像を教え込まれているため、宗教から離れても信者と同じ空気をまとってしまっている。結局今でも宗教に支配されていると感じます。

大学時代はキリスト教や仏教、イスラム教などを熱心に勉強しまし、ドイツ文学者になりましたが、研究対象の宗教的側面がどうしても気になり、考察テーマにしてしまう。

エホバから抜け出し、他宗教を知ることでエホバを相対化することが私の人生のテーマになってしまった。そうした意味でも人生を決められてしまったと思います。

問題は「カルト宗教」だけではない

ーーそもそも、お母さんはどのような理由で入信したのでしょうか。

母は裕福な家庭で育ちましたが、高校生の時に父親(横道氏の祖父)を交通事故で突然亡くしました。自分の弟たちを大学に行かせるために、自分は高校を中退して働きに出ています。とても苦労したのです。結婚後も夫(横道氏の父親)の女性関係に悩まされ、諍いが絶えませんでした。

エホバは、教義を信じれば死後に楽園で暮らせると教えます。入信すれば家族全員が幸せになれる、死別した自分の父親ともまた会えるという思いから、宗教にのめり込みました。私は不妊治療の末にやっと生まれた子どもだったこともあり、母は私への教育に熱心でした。それゆえに体罰も激しかったのです。

その一方で母は私を大学まで進学させました。エホバの2世は大学に進学させてもらえない人が多い中、そこだけは制限されませんでした。

宗教2世問題のポイントは、親や家庭によって強くカルト化する部分とカルト化しない部分があるということです。ですから、宗教2世の問題は一般的にカルトと見られている宗教だけに起こっているわけではない。カルトと言われていない宗教、たとえ伝統宗教であっても、家庭によっては苦しんでいる宗教2世がいるのです。

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