戦争、分断、格差…「力」の前に「正義」は無力なのか コロンビア大学名物授業に学ぶ政治哲学の意味
昨今の政治情勢に強く想う。ロシアによるウクライナへの侵攻は、西洋哲学の根源にかかわる問題だ。
その起源は、今から2400年以上前の「ソクラテス×トラシュマコス論争」にまで遡る。これについて、ソクラテスの弟子プラトン、プラトンの弟子アリストテレス、この3代にわたる師弟が掘り下げ大いに論じた。
西洋哲学とは彼らから発している。彼らなしの“西洋哲学”はないしそれを語ることもできない。学生時代をすごしたコロンビア大学で叩きこまれた。その揺るぎない信念は“正義”とその確立だ。
拙著でも取り上げている「ソクラテス×トラシュマコス論争」に絡めてウクライナ問題を考えたい。
「ソクラテス×トラシュマコス論争」
意外にも知らない人たちが多いが、プラトン著『国家』の冒頭に登場するソクラテスとトラシュマコスの激論は海外の知識人のあいだでは有名だ。西洋哲学のルーツとも言える。『国家』は、プラトンの師であるソクラテスを主役にした対話編の大著である。
プラトンは書のなかで、現代まで続く重要なテーマを投げかけている。
政治哲学上の諸問題はあらかた含まれる。
後世の学者は、ソクラテス・プラトンが発したこれらの問題にそれぞれの解を見つけようとした。それが西洋哲学だと言ってよい。「ソクラテス×トラシュマコス論争」は『国家』の冒頭第1巻に登場する。多岐にわたるこれらの論題を提起する“始まりの始まり”なのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら