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戦争、分断、格差…「力」の前に「正義」は無力なのか コロンビア大学名物授業に学ぶ政治哲学の意味

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  • 中村 聡一 政治哲学者/リベラルアーツ教育研究者
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ソクラテスとトラシュマコスはいったい何について語り合い、見解を異としたのか。それは“正義”の問題である。冒頭でソクラテスに論争をふっかけたトラシュマコスは言う。

「正義」=「力」なのか?

「正義とは、権力者の利益である」

支配者が善悪の判断をする。その利益に反することはすなわち悪である。支配者の利益に則すことが正しい。

「強者の論理」

それは歴史が証明するところではないか。

対して、ソクラテスが問う。権力をもってひたすら自己の利益に変えるのは即ち不正であろう。「不正」は「正義」の真逆ではないか。

この立ち位置から前述の多岐にわたるテーマが語られる。トラシュマコスの語るのは「権力の自己正当化」の問題であろう。この理屈に対峙することから西洋の政治哲学は始まったとして差し支えない。

拙著『教養としてのギリシャ・ローマ 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』で、世界に冠たるアメリカのリベラルアーツ教育のリアルな全体像とその軌跡を詳述した。アイビーリーグを筆頭とするアメリカの最トップ校において、リベラルアーツ教育は学部課程のコア(中核)である。なかでもコロンビアはパイオニアとされる。名門中の名門だ。

とりわけ「政治哲学」はそのリベラルアーツ課程の中核をなす。コロンビアでは、“contemporary civilization”(現代文明論)という授業がそれにあたる。100年以上の歴史がある授業で、名物授業として名高い。通年でしっかりと哲学の名著を学ぶ。

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【「現代文明論」の中核は政治哲学】

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