抜群に働きがいある会社と見かけ倒しの会社の差 社会の期待に応える人間でありたいと思わせるか

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2013年にヴァージン・アトランティック航空は、燃費の向上による炭素排出量の大幅な削減を目指していたという。実現できれば環境にいいだけではなく、経費を大幅に削減することも可能だ。唯一の問題があるとすれば、「どのように手をつけるか」ということだろう。

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この問題でのポイントは、ヴァージンが「燃費向上のカギを握るのは機長だ」と認識していたこと。パイロットのちょっとした選択で、消費量が大きく変わってくるからである。

たとえば離陸前、機長は機体の重量や天候を勘案し、機体に積み込む燃料の計画を立てなければならない。もちろん飛行中も高度を選択し、最短ルートを要求し、管制塔からの指示に従うことになる。両翼のセッティングなどの航空力学に関連する決定によって、使用燃料の量は変わってくるだろう。

当然ながら、こうした判断の最終権限は機長にある。会社側は燃料節約に関して奨励する手順こそ定めているものの、義務づけているわけではないのだ。

だがヴァージン航空は、炭素排出量を削減する方向で、パイロットに行動を促すアプローチを取り入れることにメリットがあると考えていた。しかしその場合、問題となるのは機長が長年慣れ親しんできた習慣を、いかに変えさせるかだ。そこで、インセンティブの重要性に着目したのである。

3つのグループに対する実験

<2014年2月から9月にかけて、ヴァージン航空のパイロットの三つのグループに、毎月、それぞれ異なるレポートを送った。第1のグループには、本人の前月の燃費についてのレポート。第2のグループには、毎月の燃費に加えて、各人に燃費節減目標を示し、目標達成を促すメッセージを添える。第3のグループには、第2グループとおなじく前月の燃料報告、個人の燃料節減目標の奨励に加え、目標が達成されるごとにパイロット本人名義で慈善団体に少額の寄付がされる、との情報を付け加えた(これは、「向社会的インセンティブ」と呼ばれる)。第4のグループは対照群で、単に燃料使用量が計測される、とだけ伝える。こうして7カ月にわたって、いつものように世界中を飛び回るパイロットに、毎月ささやかなレポートを送り続けた。(174ページより)>

この実験設計は、パイロットの年俸や業績評価を左右するものではない。しかし、ヴァージン航空が炭素排出量の削減という「規範」の確立を目指していることを暗黙のうちに知らせてもいた。パイロットは、自分の選択が直接的なマイナス評価を受けることがなくても、燃費データを幹部やリスト氏のようなエコノミストに見られることは認識していたわけである。

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